先週300kmのブルベを苦しみながら走ったというのに、なぜまたその翌週も走ろうとしているのか。
スタート地点の丘珠ふれあいセンターに到着してからも、しばらくそんなことを考えていた。
理由はもちろん、メダルのためである。
今回のBRM611は、300kmブルベが始まって100周年ということで、前回の函館300でゲットしたのとはまた違う種類のものを「買う権利がある」というのが大きなポイント。
おなじ300㎞でもメダルが違うので両方とも走っておきたいというのは人情ではあるんだけど、それにしても我ながら酔狂だなあ、と思う。
まず問題はスタート地点が微妙に遠いところにある。
札幌までは自宅からだいたい300kmくらいなので、自転車で行った方がてっとり早いまである(それで認定がもらえるならそうしただろう)。
遠いといえばこの前の八戸も遠いんだけど、あの時は新幹線が使えたので超楽ちんだった。
残念ながら北海道新幹線はまだ新はこだて北斗駅までしか開通していないので、札幌まで行く手段は特急か、自動車の二択となってしまう。
速くて肉体的にも楽なのはJRを使うことなんだけど、困るのが最終便がやたらと早くて金曜日の仕事終わりに出ると準備が間に合いそうになかった。
(しかも本業の方はイベントを控えて超忙しい時期である)
仕方がないので自動車で行くことになるんだけど、高速を使うと料金的にはJRとあんまり変わらなくなるし、とにかく肉体的に疲れるので参った。
もうひとつは宿の問題があって、深夜に到着して早朝に出るだけなのにフルプライス料金を支払うのはもったいないということ。
安いホテルもあるにはあるんだけど多くはすすきのなどの繁華街に集中しているので、そこからスタート地点まで車で行くのもタイムロスになる。
というわけで、あまり眠れないのは承知で今回も快活クラブで寝ることにしたのだった。
ここまでふたつは主にお金の問題なので、自分で解決できそうなのを単にやらないだけともいえる。
根本的に「やばいなー」と思っていたのは、当日の天気がめちゃくちゃに荒れそうなことだった。
小雨どころではない豪雨が、しかも夕方から夜にかけて襲い掛かってくるというのだからたまらない。
なのでまあ、今回のブルベの最も酔狂なポイントは「わざわざ雨の中を何時間も自転車で走りに行くこと」なのであった。
それでも勝算はいくつかあって、やはりひとつは前の週に山岳主体の函館300をわりと好タイムで走り切れたことが大きい。
今回のトトロ300はほとんど平地しかないので、平坦番長を自認する吾輩にとっては天気の良い前半戦で頑張れば、後半暗くなって雨が降ってきてからは慎重に走っても十分に間に合うだろうと思えていた。
雨対策にはワークマンのイナレムがあるし、気温はそれほど低くならなさそうだったので凍死の心配もなし。
当日は珍しくビブショーツを履いていき、上からイナレムのパンツを履いてもペダリングの邪魔にならないようにした。
普段はパールイズミのレータンかサイクルクロップドパンツしか履かないんだけど、それだと雨に濡れたら足にまとわりつきそうだったし。
この作戦は多分当たりで、イナレムは適度に伸縮性があるのでペダリングにも影響がなかったし、ショートのビブだとそれこそステテコを履いてるくらいの感覚なので自然に走ることができた。
むしろ雨の日こそロングよりショートタイプのビブの方がいいもかもしれない。
濡れた股引を履いてその上にナイロン製のパンツを履いたとすると、ふくらはぎやら膝のあたりでまとわりついて仕方が無いような気がする。
念のため替えのビブも持って行っていたけれどそちらは使わずじまいだった。
準備編はこんな感じで、舞台をスタート地点に戻す。
さすが札幌発着なだけあって参加者はかなりの人数で、それと、行ってから気が付いたんだけどスタート時間も6時と7時の2回に分けられていた。
さすが都会は違うぜ……。
スタート地点の丘珠ふれあいセンターに駐車場があるんだけど、そういう状況なのでかなり早く、6時過ぎに到着したころにはほぼほぼ満車という状況。
危うくこの前の新十津川の時のように駐車場を探して彷徨う羽目になるところだった。
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たくさん人がいるので他の人のロードバイクをチラ見するだけで勉強になる。
パッキングの仕方や、雨対策の装備にしても人それぞれだ。
レースじゃないからバイクもカーボンばかりじゃないし、かなり古いランドナーも混ざっているので自由度が高い。
(アルテのDi2以上じゃないとブルベは走れないとか、雨具はモンベル以外認めないとかの機材マウンティングも一部存在するが)
雨に備えて(まだ晴れているのに!)サイクルグローブ代わりにテムレスを装着している猛者もいた(自分はサドルバッグに入れていた)。
レースやヒルクライムなんかとは違ってどんなバイクでも、それこそ自分みたいなSORA組のエントリークロモリロードちゃんでも胸を張って参加できるところがブルベの良いところだと思う。
その後は受付、車検を終えてスタート時間になった。
いつもいつも先頭を切るのもあれだなあ、と思って誰か動き出すのを待っていると、一人が車道に向かって進み始めたのですかさずついていったら、車道に出る直前に立ち止まってなにやらゴソゴソと荷物チェックをはじめるではないか。
仕方がないのでいつものように開幕ダッシュを決めることに。
幸いこの日は午前中は気持ちのいい青空が広がっているうえ、相当強めの追い風が吹いていたのでAVE30km/hオーバーで快調な滑り出しを見せることができた。
快調に当別町までたどり着くと、前方に反射ベストを着たローディがひとり立ち止まって地図を見ている。
この時点ではスタートが2回に分けられていることを把握していなかったので、自分が一番先に出たはずなのにいつの間にか先行されている!? とびっくりした。
しかし、一時間前に出てわずか30km地点で追いついてしまうとはなかなか相当な感じではある。
ナビを使わずコマ図を見ながら走っているらしいので、
「曲がるのはまだ先ですよー」
と声をかけてオーバーテイクした。
その後、以前に新篠津のイベントで立ち寄ったNO SOFT NO LIFEを見かけるも当然のごとく営業時間外。
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まあ、別海町のソフトクリームは去年現地で食べてきたから悔いはない。
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ここから先は当別ダムまでの軽い登り。
2年前に新篠津のイベントに参加したときはまだ全然初心者だったから「坂登るのきっついなー」と思ってたけど、今になるとほとんど平地と変わらない気持ちで登れるね(平地と同じ速度で登れるとは言ってない)。
当別ダムを軽く超えて下り基調の道を快適に流していると、今度はやたらと大仰な反射ブルベを着たローディが前方を走っているのが見えた。
「こんにちわー」
と声をかけながら追い越す瞬間にチラ見したんだけど、もしかしたらあれはPBPの反射ベストかもしれない。
やはり都会だけあって相当な古強者も参戦しているのだろう。
(ここらへんでようやく、もしかして先行スタート組があったのでは? と気づいてきた)
パリブレストパリかー。
300㎞ブルベを4回立て続けに走るのと同じなんだよなー。
制限時間が90時間とゆるいから、4で割って22時間と考えても300kmおきに6時間は休める計算か。
完走率も9割近いし(参加者全員猛者だけど)、意外となんとかなるっちゃなんとかなるのでは?
みたいなことを考えているうちにPC1の石狩吉野郵便局に到着。
クイズポイントだったけれどスタッフが2名待っていたので緊張してしまった。
走り切ってもクイズで不正解したら大変なことになるので、回答部分をスマホで撮影してあとで見返せるようにした。
とりあえず前半戦は追い風に助けられたおかげで、約80㎞をAve28km/hで駆け抜けて大きな貯金ができたのが良かった。
6時スタート組のときは風がなかったのか、このPC1でも数組追い抜くことができて手ごたえを感じていた。
さて、天国なのはここまで。
ここから先は暴風と豪雨と劇坂と戦わされる地獄のブルベが始まるのだけど、その話はまた後編で。