この前札幌にプロジェクト・ヘイル・メアリーの映画を見に行ったんですよ。
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プロヘメの原作は上下巻あって結構長いんですが、Audible版でPBPの最中と行きと帰りの飛行機の中で全部聞いてめちゃくちゃ面白くって帰国してから改めて聞き直したりして相当なファンだったのです。
ほかになにかないだろうかな、と探して目に留まったのが「パリに咲くエトワール」でした。
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なんかネットで評判になっているようで、でもね、ゴールデンカムイを見に行ったときにこの予告を見たんですよ。
見ました?
自分がこの映像を見た正直な感想は、「映像はきれいだけど、お行儀が良くってきらきらしていて、ハウスの世界名作劇場みたいな雰囲気なんだろうなあ」という感じ。
ひとことでいうと退屈そう、not for meなんだろうなあ、とは思っていたんですが、どうも見た人の感想が過激すぎるし、「あんたほどの実力者がそう言うなら……」という気持ちで見ておくことにしました。

パリに咲くエトワールはマジで凄かった!!!
しかしそんな予感は映画が始まって数分で覆されます。
とにかく映像美がヤバい……。
序盤で映し出される主人公のフジコの生家の表現、日本式家屋に所狭しと押し込められた西洋の家具は、本来の色とりどりさが失われていて、まさに谷崎潤一郎の陰影礼賛の世界です。
続いてフジコの私室に場面が変われば、ねじくれた油絵の具のチューブたちはじっとりとした湿度と重苦しさをまとっていて、まさにフジコが感じている閉塞感を表しています。
これはフツーのアニメ映画じゃないぞ……。
居住まいを正したところで場面は花の都パリへ!
突き抜けるような青空に、石造りの町並みに、色が爆発したようににぎやかなパサージュへ!
フジコ自身の心情までが背景美術の描き方にまで反映されていてとにかく凄い。
そんな感じで美術が凄いことに最初は度肝を抜かれるんですが、やはりストーリーが抜群にいい!
ここまでフジコを中心に話が進んでいたんですが、もうひとりの主人公、千鶴が凄い!
ナギナタは強いし(もと剣道部なのでその強さはよく分かる)、
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オペラ座の舞台に立つという子どものころからの夢を追い続けているし、

パリで絵の勉強をしたいというフジコと、二人の夢が交錯して、挫折しそうになり、それでもひたむきに頑張りつづける姿が美しすぎる……。
そしてこの二人を支えるパリの人々も、一筋縄では行かないいろんなものを抱えているところがいいんですよねえ。
なんといってもみんなが大好きなのはオルガ夫人でしょう!

ロシア革命から逃れてパリにやってきた辛い過去を持ち、一見冷たく見えるけれど、見込みがあるとわかるとビシビシ厳しく千鶴をスパルタに鍛え上げていく……。そんなところがいいよねえ……。
そうそう、そんな女子たちのキラキラした夢を着実に第一次世界大戦の気配がむしばんでいくんですよね。
夢をかなえるまでパリに居続けられるのかという不安もあるし、だけどそういった時代背景だからこそ、東洋人がオペラ座の舞台に立つという無茶が実現できたわけで、そのバランスが絶妙だし、すべての脚本が正確な計算の上に成り立っていると感じるからしびれてしまう。
キラキラものかと思わせておいて意外と硬派で武骨で、だけどときどきぶっ飛んでいて、まったく飽きることなく最後まで興奮しっぱなしでした。
3月はゴールデンカムイとプロジェクトヘイルメアリーとパリに咲くエトワールを見たんですが、ダントツにパリエトが面白かったですね。
というか下手をしたら歴代見てきたアニメ映画の中でも相当上位に来るかも……。
フジコも千鶴もちゃんと可愛いのが良かったかな。
特に千鶴は武者修行スタイルから、パリでの普段着になると途端にフリフリのフリルがついてギャップに驚かされるし、バーの踊り子の衣装を着せられて「こんなに足を出すなんて」とドキドキしているのもほほ笑ましいし、バレエと薙刀を融合させた新技でラスボスと戦うシーンは勇ましいし、

一方のフジコはというと「せっかくパリに来たのに絵が描けない」とボロボロ泣き出すからいつも元気なフジコにも可愛いところがあるねと思っていたら「だって、ピカソにもルノワールにも勝てないから!」といい出すので脱帽ですよ。

パリに咲くエトワールというタイトルなのだからバレエの方は成功が約束されているけれど、果たしてフジコの夢は? と思ったところからのエンディングが圧巻。
最初から最後まで飽きるところなく楽しんだ映画でした。
そんな感じでめちゃくちゃ面白いので、もし予定が空いていたらぜひ今週末見に行ってください。
プロジェクト・ヘイル・メアリーは?
うん、これもめちゃくちゃ良かったです。

でもなあ……。
原作既読勢からすると答え合わせみたいで、あれも飛ばした、あそこも飛ばした、みたいに感じちゃいますね。
Netflixでドラマにして欲しいかも。
良かったのはロッキーの話し声だとか、エリディアンが作り出すキセノナイトがフィラメント構造で「なるほど!」と思ったり、ビジュアル的に保管できるところ。
国宝の映画を見てから原作を読んでみて思ったのは、意外と原作だと歌舞伎の部分はあっさり終わっちゃうんですね。
幕が開いて、次のページを開いたら幕が下りているみたいな感じ。
そこを劇場版ではうまくビジュアルに特化して凄みを見せていたけれど,同様にプロヘメも頭の中で描いていたものがどう表現されているか、そういうものを確認しにいく感じでした。
なので逆にコレは原作を読まずに見に行って、はまったら原作を読むのがいいんじゃないかな。
火星の人は映画はそこそこに感じて、原作の方はめちゃくちゃ面白かったので、やっぱり映像化というのはなかなか難しいのかもねえ。

