午前0時。
目覚ましが鳴る前に起きてしまった。
本当はもう少し寝ておく予定だったけど仕方がない。
昨日フクハラ(帯広ローカルのスーパー)で買っておいたまるちゃんの山菜そばと納豆巻きを食べる。
とりあえずロングライド前には納豆を食べておけば間違いない。
フランスにも持っていこうかな。
フリーズドライならワンチャンあるか……!
今回のコースは序盤26km地点のコンビニを通り過ぎると、次は160km先までコンビニがないというザ・試される大地であるため、先にコンビニに寄って補給食を念入りに買い込んだ。
ナッツバーとザバスのプロテインバー、inゼリー、あとは家から持参したCOMPとアミノバイタルがあるし、ドリンクのボトルも2本あるので準備は万端。
スタート地点である音更の道の駅にたどり着くと駐車場は8割ほど埋まっており、車中泊者が多いっぽかった。
中にはブルベ参加者もいたと思うけど、自分は軽自動車だからロードバイクを積んでしまうと前の座席を倒せないのでちょっと無理なのだった。
ロードバイクを組み立てて、まだ時間が早すぎるのであたりを徘徊していたら面白い自販機を発見。
補給食にチューブ、シーリングまで売られていて便利すぎる!
早速補給食をゲット。
こんなんなんぼあってもいいですからね~。
と思っていたら、なんと地元自治体からの支援があり、この補給食に加えてオリジナルタオルやきなこねじりが参加者向けにプレゼントされるという粋な計らいが!
自腹で買っちゃったけど、また今度食べればいいし!
obihiro.goguynet.jp
作っているのはアグリウムというところで、地元のサイクリストパティシエさんが作っているというだけあって、コンビニで売られているナッツバーよりも香ばしくて美味しかった。
Twitterでおなじみの910さん、ジブぽんさんと挨拶していたら、ふたりともPC1でここに戻ってくるからと、前半のヒルクライム用装備から後半の平坦向け装備に切り替える話をしていたので焦った。
自分は脳死でフル装備で行くことしか考えてなかったので、(やはりベテランさんは意識が高い)と密かに震えていた。
スタート~三国峠
早々に車検をくぐったあとは、ナビの準備をしたりしながら微妙にあたりを伺っていた。
なにせ時間は午前3時だ。
真っ暗な知らない道を一人で走りたくはない。
そうこうしているうちに一人が飛び出していったので、てきとーな間隔を開けて自分もスタートを切った。
そのうちに後続が2人追いついてきて、4人の逃げ集団を形成。
「ここで曲がる?」
「もう一本先です」
など、声を掛け合いながら進んだ。
前を行く方はふくらはぎを見て分かるほどの猛者で、明るくなり始めるとハンドルから両手を離してヘルメットを脱いで尾灯を消してみたり、なおかつスピードアップしてみたりと超絶技巧を駆使していた。
後続の二人のうちの一人は、彼に「上りになるまで引きますよ」などと言って前に出ていったので、この人も相当な猛者だと思われる。
自分はついていくことはできるけど、引こうなんて自信はどこにもないし。
とまれ、ついていけたのも平坦区間までで、然別湖に向かう登り口に差し掛かった途端にぶち抜かれてしまった。
その後も次々と追い抜かされるばかりで、大人しく音楽でも聞きながらのんのんと登ることにした。
今までは「ヒルクライムのかたきは平地で討つ」などと簡単に考えていたけど、実は全然そうはうまくいかないことが理解できてきた。
たとえば自分が時速5kmで10kmの坂を登り、相手は時速6kmで登るとする。
上りにかかる時間は、自分は2時間、相手は1時間40分で、20分の差がつく。
このあと平地が50kmあったとして、相手が25km/hで走ったら2時間かかるので、逆に自分がここを1時間40分で走りきれば追いつくことができるんだけど、そのためには約30km/h出す必要がある。
要はヒルクライムでの時速1km差というのは、割合で、つまり20%速いとして考えなければダメなのだ。
ヒルクライムで自分よりも2割速い相手と同等に走るには、平坦で相手の2割増しのスピードで走らなければならないわけで、まあ、無理ゲーです。
基準となる速度が低いヒルクライムのほうがタイムの絶対的な差を生みやすく、だからヴィンゲゴーやポガチャルは上りが速いんだなあ。
などと考えているうちにクイズチェックをスルーしたり引き返したり、そんなことを今回のブルベでも2、3度繰り返しているのでタイムロスを考えたら、速く走るよりもコースをちゃんと覚えるほうが大事かもしれない。
日の出。
午前3時スタートは、思ってたよりすごくいい。
走り始めてすぐに市民薄明になってライトもいらなくなるし、こうやって絶景から日の出を拝むこともできる。
湖を抜けて再びのヒルクライム。
三国峠は去年の北の国から400で、旭川側から登ってこちらを下ったのでなんとなくわかっていたけど、やはり予想していたとおり斜度がゆるくてダルい上りがひたすら続くだけで、難易度的にはたいしたことがなかった。
それは速く登れるという意味じゃなくて、楽に登れるという意味ね。
平均斜度4%くらいならば、セミコンパクトクランクと36Tのお姫様スプロケットのおかげで足に負担をかけずに登ることができる。
そんな感じで序盤の難所100kmを、普通に5時間未満でクリアーできてホッとした。
とにかく登坂力がないので山が恐ろしい。
トイレに行って戻ってきたら運営さんがいたので、
「上りが終わったからあとは下りと平坦だけですね!」
と言ったところ、
「もう登らない、とは言いませんよ(ニヤリ」
と不敵な笑みで返された。
いやいや、この標高差だよ?
もう残りは真っ平らだよ?
と、このときは思ったのだった(フラグ
三国峠~PC1
さてお待ちかねのダウンヒルタイムである。
登りがダルいヒルクライムは、その位置エネルギーをダラダラと長時間放出できるので最高のダウンヒルになる。
これが急峻だと登りでは両膝を破壊されるし下りでもブレーキを握りしめるしかなくて辛い×辛いとなってしまう。
さらに気分が良かったのがいま来た道を下るところ。
あとから登ってくる人とすれ違うことになるので、こちらはもう登りから開放されて「サイクリング楽しすぎるぜぇ!!!」くらいのテンションで陽気に手を振って挨拶できるし、相手はまだまだ苦しいヒルクライムが続くわけだし、単に平地ですれ違うのとは違う高揚感があった。
最後の人とすれ違ったのは8時20分くらいだったので、それでも全然差がついていない感じだった。
とりあえず一番苦しい部分は終わったので、残り300kmはもうゆるポタである。
というわけで、かねてから狙っていたタウシュベツ川橋梁に行ってみることにした。
www.kamishihoro.jp
ここも去年横を通っているんだけど、雨だし夕暮れだし早くコンビニに入りたかったしでスルーせざるを得なかった。
ロードバイクから熊鈴を取り外して、まるでお輪を鳴らし歩くお坊さんみたいなスタイルで展望台までの道を進む。
すると前方から呼応するように鈴の音が聞こえてきて、こだまかな? と思ったら参加者の一人が、ロードバイクを抱えながら歩いてきたのでびっくりした。
まあ、防犯のことを考えたら持ってくほうが安心よね。
天気が良かったこともあり、この日のタウシュベツ川橋梁は素晴らしくよく見えた。
水が引いてあらわになった湖底が一面の草原になっており、この世のものとは思えない幻想的な風景だった。
いつまでも見ているわけにはいかないので後ろ髪を引かれつつここをあとにして、再びロードバイクに乗り込んだ。
下りは斜度が緩やかで快調なはずが、実際に降ってみると以外にそうでもない。
というのも、北海道の豪雪地帯にはよくありがちなんだけど、5mか10mくらいおきに道路をヒビが横断しているのだ。
そんなに大きな溝ではないので自動車で通っていてもそんなに気にならないし、ヒルクライムの速度感では問題がない。
ところがダウンヒルだとダンッ!ダンッ!と跳ねるように乗り上げてしまう。
パンクが怖いから色が濃く見える深い溝では尻を上げて、タイヤに負荷をかけないように慎重に下るしかない。
さらにその上、走っている途中でドン! という大きな音がして何かが自転車から外れて落ちた。
慌てて急ブレーキをかけて振り返ると、レックマウントがライトごと脱落してしまっていた。
ネジがゆるゆるなので段差を超える振動でどんどんゆるんでしまうのだ。
出発前に一番深いところまで締めたのに、わずか100kmで抜けてしまうとは。
幸いライトにダメージはなかったので、再びつけ直してリスタートした。
ちなみにレックマウントは、このあとまた300km地点でも脱落することになる。
ロックタイトで固定しちゃうか、それこそビニールテープで巻いてネジが抜けないように対策しないとダメかもしれないなあ。
さて160kmほど走ってようやく上士幌町市街地に入り、待ちに待った休憩タイムである。
PBPでもこんな距離を無補給なんてありえないぜぇ、と思いつつセブンイレブンの前に停めると、壁中に「ゴミ箱ありません」の張り紙があって絶望。
もうセブンイレブンじゃなくて”ゴミ箱ナインイレブン”に改名しておくれよ……と悲しみのリスタートとなった。
そういえば記憶をたどれば、去年のPCはセコマだったはず。
確かそこでは鉄夫さんが落としたボトルをあとから来た人が拾って届けてくれるという感動のイベントがあったような……?
でもあそこのセコマもゴミ箱がなかったんじゃなかったかな……?
コンビニが悪いんじゃなくて、上士幌町が悪い可能性……?
考えても仕方がないし、水も食料もふんだんに残っているので諦めてPC1を目指すことにした。
そんな感じで200kmを無補給でPC1に到着。
前の日から暴食を続けていたおかげでなんとかもったかな。
とりあえず、食べられるときに食べておく。
本番もその気持ちで行こうと決めたのだった。