四重渓温泉での夜のこと、ふと目が覚めて時計を見るとまだ午前3時くらいで、さすがにまだ早すぎると目を閉じたのですが、外からごうごうという大きな音が響いてきてまったく寝付けません。
トラックが走っているにしては途切れないし、なんだろう。
そう思って窓の外を見ると猛烈な風が吹き荒れており、木の枝が折れんばかりに激しくゆさぶられていました。
これは大変なことになっているぞ、と天気予報を見て驚きました。
明日1日中、風速15m/sとは、ほとんど台風並みの強風です。
翌日の予定は山越えから台東を経由して池上を目指すことにしていたんですが、それもちょっと危うくなってきました。
この四重渓までの道路は国道1号線とは違って片側1車線の普通の道路です。
交通量は少ないとはいえ、風に煽られたら一発アウト。
外側に吹かれても谷底に真っ逆さまになりかねません。
この日以外のコースであればなんとか凌げたんですが、これはちょっと無理だな……、と転進を決めました。
風向きを考えると一旦大きな駅がある屏東まで北上し、次に宿泊する予定の池上まで電車で輪行するのが一番確実かな、と。
このルートであれば東側からの風が強くても、片側2車線+二輪車専用道の組み合わせなので安全だろうとの判断です。
ただ、これをしてしまうと「自転車台湾一周」の認定は取れなくなってしまいます。
公式ルートでは輪行が認められているのは花蓮~蘇澳新までのみとなっていて、それ以外で電車を使ってしまうとアウトになるのでした。
いちおう、予備日は1日あるから今日は一日延泊して、翌日以降の宿の予約をずらせば対応可能です。
が、この先でなにかトラブルが発生するかもしれないし、環島の認定はいま絶対に取らなければならないわけでもないので、そこは諦めることに。
そうと決まれば鉄道の予約です。
事前にネット予約をしておかないと売り切れるおそれがあるとのことなので、まずは屏東から池上までの電車を予約。
ついでに翌日の、花蓮からのサイクルトレインの予約し、もう認定は関係ないので蘇澳新ではなくもっと北にある頭城まで電車で行くことにしました。
朝6時ころ、起きてきた宿の主人に
「今日は風がめちゃ強だから屏東まで戻って電車に乗るよ」
というと、
「気をつけてね。グッドラック」
と見送ってくれました。
毎日誰もいない時間帯に出発してばかりなので、こういうやり取りも新鮮です。
さて強風の具合はと言うと、予想したとおりに荒れ狂っており、時折吹く突風で1車線ほど横に流されたりするので、やはり迂回して正解だと思いました。
荒れ狂う風の中、2時間ほど北上するとようやく風も落ち着いてきたので遅めの朝食を取ることにしました。
結構ローカルな場所なので菜単もなく、指差し注文です。
とりあえず壁にかかったホワイトボードの鱸魚湯というのを注文。
「ルーローファンはいるか?」
と聞かれたのでハオハオと返答し、さらにはガラスケースの中のおかずも選び、かなり豪華な食事になりました。
魯肉飯は美味しいけど、どこでも出てくるので食べ飽き感が出てきました。
しかも角煮も頼んでしまったので被り感まで。
でも野菜が美味しくて、とくにたけのこの炒め物は好きだなあ。
スープの方は「鱸肉」と書いてあるけれど、スズキではなく、どちらかというとサバヒーに似た感じで、脂っこいけど少しマイルドな感じ。
もしかしたらこれはバラマンディ、金目鱸と呼ばれる方の魚なのかもしれません。
面白いのが薬味としてワサビが出てきたこと。
脂くどい魚にはたしかにワサビのさっぱり感がちょうどよく、もしかしたらサバヒーもワサビが合ったほうが美味しく食べられるかもしれません。
そんなこんなで12時ころに屏東駅に到着。
わずか85km程度しかないのに、前半に風に翻弄されたせいでほぼ5時間もかかってしまい、結構ギリギリな時間になりました。
さて、台湾の鉄道はサイクルトレイン以外の場合、日本と同様に輪行袋への収納が必要になります。
自分はブルベの場合はトラブルに備えて、PEKOさん印の超軽量輪行袋を常に携帯しています。
サドルバッグの片隅に入れておける大きさと重さなので、もしものときのために常備しておいたほうがいいですね。
輪行箱への収納作業と違い、袋の場合は15分くらいで終了するのでだいぶ楽です。
自転車を担ぎ、窓口に行って切符を受け取り(自転車の分の支払いはナシでした)、駅弁を買ってホームに向かいます。
ホームにあるベンチに座ってヘルメットを脱いだ瞬間、ゾッと寒気がしました。
(左側のイヤホンがない……?)
旅行中は常にSHOKZのOPEN FITを装着していたんですが、気がつくと片方なくなっていました。
3万円くらいするので紛失となるとダメージは大きいし、メルカリで
「Openfit 左側」
で検索しながら電車を待ちました。
電車に乗り込んで自転車を荷物置き場に置き、席につくためにリュックサックを下ろすと、びょーん、と黒いものが飛び出していくのが見えました。
これは左側のイヤホン!
たぶん、ホームについてヘルメットを外したときに一緒に外れて、耳に引っ掛けるフックの部分が肩紐かどこかにかかっていたんでしょう。
このときばかりは涙が出るほど安心しました。
一息ついたところで駅弁です。
ただこれはちょっと微妙かなあ。
角煮は骨と筋があるので微妙に食べづらく、ご飯の量が多すぎて食べきれない感じでした。
池上は弁当で有名なので、明日はリベンジを果たしたいところ。
のんびりと風景を眺めているうちに列車は池上駅に到着しました。
ここから町外れにあるドミトリーへと向かいます。
仮期民宿
maps.app.goo.gl
電車で来たので予定よりも数時間早く到着してしまい、宿は開けっ放しで誰もいないという状態。
ちょうどBooking.comに「何時ころチェックインしますか?」とのメッセージが入ったので、「もう建物の中にいるよ」と応えるとすぐに若い女性のオーナーがやってきました。
入口の暗証番号や、施設の説明を聞き、その後はシャワーを浴びてさっぱりします。
ここの宿の評価は、まあまあ、というところですね。
良いところは
- 値段が安い
- タオルがある
ところ。
イマイチなところは
- 自転車は外に置く(広い半オープンのガレージなので屋根はある)
- 靴も外に置く
- 洗濯機がない
- 部屋が狭い
- シャワーとトイレが一体なのはいいけど、床に仕切りがないのでびしゃびしゃになる
というところ。
LINEの返事も返ってこなかったりするし、ここはイマイチでしたね〜。
洗濯機がないので、2日分のジャージを洗うために街の中のコインランドリーを目指しました。
その方が確実に乾燥させられるので、ランドリーの近くにある宿を探す、というほうが理にかなっているかもしれません。
洗濯機に汚れ物を放り込んで、時間つぶしのために街をぶらつきます。
すると、なんだか賑わっていておしゃれそうな喫茶店を見つけたので寄ってみることにしました。
コーヒーとケーキのセットがあるというので注文すると、ケーキを焼くのに時間がかかるから、とウーロン茶のサービスがありました。
飲みながら待っていると出てきたのは焼き立てのパンケーキと、鼻がやられ気味でも分かる良い匂いのコーヒーです。
女性店長に自転車で台湾を一周している話をすると「どうして池上に来たの?」と問われたので、弁当が有名なので食べてみたかったこと、YOUTUBEで日本人が紹介している動画を見たことなどを伝えました。
その動画によるとこの池上、米どころとして有名な場所なんですが近年はサブカル的な人気も高まっていて、ミュージシャンや絵描きなどが集まってイベントを開催したりするらしく、それでこういうオシャレ喫茶店もあったりするのでしょう。
帰り際に美人店長から他の商品も見ていってと言われ、彼女の母親が支援しているアーティストのCDなどを見せられて、結局この地方で作られている紅茶を買わされることになってしまいました。
まあ、お茶なら荷物にならないからいいんですが(汗
洗濯が終わって乾燥機に入れ直し、今度は夕食です。
適当にぶらぶら見ていると、牛肉麺のお店があり、たしか池上は池上牛でも有名だったので寄ってみることにしました。
ここは牛肉の出汁がしっかり効いている上に、トマトの風味も相まって絶品でした。
やはりおしゃれな街だけあって牛肉麺にも流行が取り入れられていますね。
ここは一品料理がないお店で小腹が減ったので、帰りにセブンイレブンで台湾おでんを買って帰りました。
ただ、これは日本のおでんを八角で味付けしたというだけの感じですね。
台湾飯はどこも美味しいけれど、コンビニにあまり大きな期待をしてはいけないw
そんな感じで5日目は、強風トラブルのせいでほぼ鉄道輪行となりました。
のどの具合もあまりよろしくないので、引き続き明日は輪行メインとし、池上〜花蓮もスキップする予定。
台湾の東側をまるまる飛ばしてしまったのがスキップしてしまったのは残念なので、次に来るときの課題にしようと思います。