レストランが外れだったり駐輪場で自転車を倒されたりした外れWPであるケディアックから、次のPCであるルデアックまではたったの25kmほどしかないので、スルーして頑張って走った方が良かったかもしれない。
今回唯一後悔するポイントはここくらいかな。
混んでそうなルデアックのひとつ前で休むことにこだわり過ぎてしまった。
PC4 LOUDEAC(8/21 21:57 435km)
ルデアックに着くころには、日が落ちてすっかり夜になっていた。
1,200kmの行程を3分割して、だいたい400km、800km地点にあるルデアックはドロップバッグ置き場にもなっており、PBPにおける最大の山場だ。
ここで着替えたり大休憩を取ったりするのが参加者のセオリーになっているため、全PCのうちで一番混んでいた。
そして自転車の台数が多すぎて、自分のを探せなくて迷ってしまったというね。
こんなときのためにAirTagを仕込んでいたんだけど、大まかな位置しか探せないのでだいぶ無力だった。
少なくともルデアックでは、自分の自転車の位置をおぼえておくために写真を撮っておいた方がいいと思った。
スタンプをもらって、まずはドロップバッグを受け取りに行く。
駐輪場のスペースから屋外の階段を下って、ワンフロア下がったところにある建物の中がドロップバッグ置き場になっていた。
事前のイメージでは半屋外のガレージみたいなところだと思っていたので、思いのほかきちんとしていたのでだいぶ迷ってしまった。
この日受け取るものは事前にジップロックに小分けしてあるので作業はスムーズ。
ただ、補給食はあまり食べなかったので減った分だけ追加することに。
最終組だったこともあってレストランもそれほど混んでおらず、座って食べられたのが大きかったかな。
水で戻せるおにぎりは、作るのが面倒くさくて結局ホテルでしか食べなかったし。
良く食べたのはクルミ餅ともち麦スティック、塩熱飴くらいかな。
(COMPのグミを忘れてきたのは痛恨だった)
それから着替えをもってシャワーへ向かったんだけど、ここの施設はなかなかのハードモード。
更衣室の床は無垢の木がベコベコしていてゴミでざらついているし、男子更衣室の奥に女性用シャワールームがあるので、全裸になった横をランドヌーズがぞろぞろ通り過ぎていくというカオスっぷり。
シャワールームは仕切りなんぞ一切ないだだっぴろい空間で、当然ここの床もゴミだらけ、壁際にあるボタンを押すと天井にあるシャワーヘッドからなまぬるいお湯がじゃばじゃばと落ちてくるという有様で、日本の男子刑務所だってなんぼかマシだぞ、という感じ。
いちおうシャンプーはあって、床に転がっているのを自由に使うシステムだった。
受付で貸してくれるシーツみたいなどでかい布は全然水を吸わないし、これに関しては日本から持って行った冷えるタオルがあったので助かった。
ルデアック近辺で宿をとる人が多いと聞いていたけど、さもありなん感が大きい。
こーゆーところを平気で使えるド根性が、PBPには必要なのだった。
ここでは日本人参加者と一緒だったのでいろいろ雑談をしていたんだけど、ジャージと尻にプロテクトJ1を塗りこんでいると、
「それ、塗って5分くらい全裸で待機してないと塗膜できなくないですか?」
と謎の質問をされた。
いや、5分待てば被膜ができると書いてあるけど、それまで待つ必要はないのでは……と思ったけれどそこは軽く聞き流しておいた。
保護効果が8時間しか持たないので、まじめにやるなら道中で10回くらい(それこそPCごとに)塗らないとダメっぽい。
シャワーは大変だったけど、とりあえず着替えてさっぱりできたのでそのまま食堂へ向かった。
この時間、先のグループの人たちはだいたい仮眠をしているので、駐輪してある自転車の台数のわりに食堂は全然混みあっておらず快適だった。
魚のクリーム煮とご飯の相性がバッチリ。
食べ終わった後は、そのままテーブルに突っ伏して仮眠をとった。
当初の予定ではここで5時間ほど滞在して仮眠所でゆっくり寝るつもりだったんだけど、とにかく昼間は暑さが厳しくて全然走れないので、仮眠を短くして夜のうちに距離を稼いでしまう作戦に切り替えた。
そういうわけで22日の0時過ぎにリスタートしたんだけど、とにかく眠い。
この時間になるとそこそこ寒いし、暗いし人も少ないので、走るペースも緩慢になる。
しかもルデアックを出てから登りが厳しくなったのもつらかった。
長い長い上り坂では全然頑張らない(頑張れない)ので、心拍数も下がってマイクロスリープが頻発することになる。
思わずガクッとなって左に大きく傾いたとき、後ろから
「大丈夫ですか?」
と、女性の声がした。
その瞬間、目がバッチリと醒めて
「ああごめんなさい、つい眠くなっちゃって」
と答えた。
相手が女の人というのもあるし(重要)、脳が会話モードに切り替わって活性化しているのを感じた。
人と話していると眠くなくなるという効果もあるのだなあ。
でも、グループで走っていて、一人が眠くなってみんなで待機したという話も聞いたので、たまに話すから効果が大きいのかもしれないよなあ。
その人とは、そろそろシークレットPCがありそう、とか、WPのサンニコラなんじゃないか、とか、Twitterで見たらその手前に別にあるようだ、みたいな話をしていた覚えがある。
そういうことを話していたらだいぶ気力が戻ってきたので本当に助かった。
大きな上り坂を越えたところには臨時カフェが開店していて、さながらサイクリストホイホイのようだった。
ここでコーヒー分を補給するとともに、ちょっとだけ仮眠。
元気が湧いてきたので、ここから先の山道では大声で歌いながらヒルクライムをしていた。
中島みゆきとか槇原敬之とか、頭にしみついていて考えなくても歌詞が思い出せるような懐メロを延々と歌い続ける。
どーせ周りは外人ばかりだし、聞こえたって影響あるまい。
(日本国内でも結構歌っているけれど)
実際問題、夜中は外国の人も結構歌っていたしね。
シークレットPC(Canihuel)
そんな感じで適当に走っていると、カヌエルという街にあるシークレットPCに到着。
コース通りに走っていくと必ず通過するように作られていたので、今回は誤って通り過ぎる人もいなくなったんじゃないかな。
本当にこじんまりとした施設だったので、チェックだけしてもらって先を急いだ。
WP3 Saint-Nicolas-du-Pélem(8/22 03:21 482km)
サンニコラがシークレットPCなんじゃないかと言われてたんだけど(シークレットに到着したとき「サンニコラだ!」という叫び声が聞こえた)、スタンプにはカニュエルと書いてあったし、果たして7kmほど進むとサンニコラに到着。
サンニコラから次のPCであるカレ=プレゲールまでは32kmしかないので、ここも華麗にスルー。
PC5 CARHAIX-PLOUGUER(8/22 05:23 514km)
というわけでカレ=プレゲールに到着。
(港町のカレーではなく、ブルターニュ地方のカレ)
前半戦、ランブイエからルデアックまではほとんど平坦基調で楽勝モードだったんだけど、ルデアックからカレまでの区間は激しい登りが多くて往生した。
PBPは平坦ステージだといったな、あれは嘘だ。
79kmで840mの登りがあって、平均速度は15km/h台にまで落ち込んでいた。
足に疲れがたまってきていたので、ここでは糖分主体の補給。
謎野菜スープはPBPにおける定番中の定番になった。
ほんと、これがなければ完走できてなかったと思う。
どんなに胃が疲れていても飲めるし、暖かいものを入れると胃が動き出して、次のPCに到着する頃には普通の食事が食べられるようになった。
レストランに頼る戦略じゃなければ相当厳しかったなあ、と今でも思う。
ほかにリンゴの甘いパンと、名物のパリブレストもいただいた(正直、ビアードパパの方が美味い)。
さらにニンジンサラダとヨーグルトで栄養バランスもいい。
座って食べるとタイムロスになるからと忌避する考え方もあるけれど、座っていれば疲れもとれるし、補給食よりは栄養のバランスもいいし美味しいし、いざとなればそのまま席で寝られるし、レストラン補給戦略は自分にとってベストだった。
カレでも日の出まで仮眠をとって、貯金を順調に食いつぶしてからリスタート。
朝はブーランジェリーが開いているので補給食をゲットするに限る。
クロワッサンとコーヒーはその場で食べて、他にトルティーヤのサラダを注文してジャージのポケットに差し、走りながら食べた。
PC7 BREST(8/22 11:12 604km)
そんな感じでいよいよ折り返し地点のブレストに到着。
これで全行程の半分を終えたことになる。
到着したのは22日の午前11時12分なので、だいたい38時間かな。
ウナギ600のときより早く走れている(あの時は仮眠で寝過ごしたけど)ので、思った以上に良いペースだ。
ここまでたどり着ければほぼ勝ち確で、というのも復路は制限時間が断然にゆるくなるのだ。
前半の600kmは制限時間が40時間で、通常の600kmブルベと同じペースなので結構マジで走らないとならない。
だけど後半は同じ600kmで50時間のペースになるので、かなり余裕が出てくる。
いきなり10時間もらえるわけじゃないけれど、前に進んでさえいればチェックポイントに着くたびにどんどん貯金が増えていくので、休みもとりやすい。
観光もやりやすいし、街で食事もとり放題と、後半戦からがいよいよPBPの楽しみが始まるといっても過言ではない。
と、思っていたのだ。
この時までは。
そんな感じで往路の600kmを終了。
とりあえずここまでは、大変ではあるけれど予想の範囲内という印象。
前半500㎞が平坦で、最後100kmでヒルクライムを残しているところがブルベらしくていやらしいコースではあるけれど、北海道のブルベの方が難易度は高いと思う。
むしろ本州民だったら、信号峠もないしリアル峠もなくて楽勝すぎるんじゃないのかな、と思ってしまうレベル。
問題は寒暖差で、昼間は暑さでバテるし、夜は寒くて眠くなるし、その対応が大変だった。
8月は家に引きこもってばかりで全然運動しなかったけれど、しっかり暑熱順化してくるべきだったなあ。
というわけで次回は、再び訪れる復路のルデアック。
暑さ、寒さに加えて現れた第3の敵、その名も眠気!
外人さんのイビキが響き渡るルデアックの仮眠所で、無事に眠ることができるのか、こうご期待!