PikaCycling

Raleigh CRAとDAHON routeを買ったばかりのサイクリング初心者。ポタポタとポタリングを楽しもうと思っています。

Raleigh CRAで島牧村をひた走ってきた

秋も深まってきた北海道には、日に日に冬の足音が近づいてくる気配が漂う。
初雪を思わせるように雪虫がちらほらと漂い、長い長い冬の幕開けを予感させるのだった。

雪が降るとロードバイクに乗るのは無理になるのでこの時期のうちになるべく乗っておきたいのだけど、そうは問屋がおろさず週末に限って雨の予報だったりする。
平日は3日連続で晴れていて、土日は台風接近により不確定というのはとても悲しい。

しかし逆に考えるとこれはチャンスでもある。
いかに天気が変わりやすい秋とはいえ、さすがに水木金と3日連続晴れならば、途中で崩れるよすがもない。
幸いにしてコロナ禍の影響で直近のイベントがぶっ飛んで、当面急ぎの仕事もない。
というわけで、有給をとって平日に(!)ライドに出かけることとした。

道南の道はほぼほぼ制覇したのだけど、まだ走っていなかったのは今金町を横断する美利河ダム沿いの国道230号。

ただ、ここを通って一周するルートを描くためにはかならずデスロード国道5号を通る必要があるので躊躇していた。
でもまあ、何度か走ってみて早朝なら交通量も少なく比較的走りやすいことがわかってきたので、230号の終点の国縫をスタート地点にして、最初に5号を5kmほど北上して長万部の市街地に入ればなんとかなりそうだった。
そこから内陸に入って黒松内を抜けて、島牧村を経由して国縫に戻ってくると距離160km獲得標高1,600mのちょうどいいコースになる。

国縫海浜公園へ

車は国縫漁港のすぐ近くにある海浜公園の駐車場にデポ。
ここは漁港で釣りをする人の駐車場になっているので、長時間停めておいても違和感無さそう。

自転車を組み立てていたら近所に住んでいるおじさんから
「どこまで行くの?」
と話しかけられた。
話しかけられると思っていなかったので
「えーと、山を越えて……」
と曖昧なことを答えると、
「今金まで?」
と聞かれて、(まあ今金も通るしな)と思ったので
「そうです。今日は天気がいいんで」
と答えた。
まさか島牧村を経由してぐるっと戻ってくるとは思うまい。


空模様は完全に秋だ。
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走り出すと朝の空気はかなり冷たくて、LIXADAの長袖ジャージを着てきて正解だった。

赤くて派手かと思ったけれど、実際着てみると意外とそんなこともない。
分厚くてゴワッとしているけれど動きを邪魔することもなく、なかなか快適だった。

早朝のうちはネックゲイターもあると便利。

ワークマンプラスで買ったんだけど、平地では首に巻いておいてネックウォーマーにして、ダウンヒルでは引き上げて顔を守るとちょうどよかった。
あと、これは本来の使い方ではないかもしれないけれど、コンビニに入る時にマスク代わりとして使えて楽だった。
まあ、口元が隠れていればいいからね。

道道523号美川黒松内

日本海側に抜けるには普通に寿都町経由で行ってもいいんだけど、道道523号を通るとちょうどいい山越えになることがわかったので、あえて獲得標高を稼ぐことにした。

ロードバイクの醍醐味はやっぱりヒルクライムだ。
山を登って風景の違いを楽しみ、下り坂を軽快に駆け下りて、平地では味わえないこのメリハリを求めて人は山に登るのだ。

黒松内市街を華麗に抜けると、登校中の中学生の脇を通ることになるのでちょっと気まずい。
平日ライドに対するちょっとした罪悪感もまた、普段経験することがないスパイスになる。

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山越えに至る前にはかならず駐車場(チェーン脱着場)があるので、そこで一旦小休止をとることにしている。
登り始めてから補給のために足を止めると再スタートがしんどい。
先にポカリを飲んで電解質を取り込んだり、ゼリーを飲んだりしてヒルクライムのためのエネルギーをチャージ。


相変わらず風は冷たいのだけど山を登り始めるとかなり暑くなって、ジャージの前を全開にしても汗がやまないのでまいった。
休んだ時に半袖ジャージに着替えておけば良かったかもしれない。

しかし道道523号はなかなか最高の道路だった。
前述したとおり普通は日本海側に渡るのに寿都町を経由するのが一般的だからこちらの道は交通量が極端に少なく、ということは路面の状況もかなり良く、登っていてとても楽しい。
速く登る気などはさらさらないので、自然の風と風景を愛でながらぽたぽたとペダルと踏み続ける。

ようやっと頂上にたどり着くと、そこに広がっていたのは予想だにしない光景だった。
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なんだこのサイバーパンクなトンネルは!!!
吹きっ晒しで道路が雪に埋もれないためのスノーシェルターなんだけど、見た目がとにかくかっこいい。
というか、住める。

崩壊した世界で人々はトンネル内に隠れ住み、通過する旅人から通行料をとったり交易をして暮らすのだ。
みたいなマッドマックス的な世界観が一瞬で思い浮かぶ。


その後は風を切り裂いてダウンヒル!!!
この楽しさは文章でも、動画でも、何をもってしても余人に伝えることができない。
視覚や聴覚だけでなく、全身に伝わる振動と、肌に伝わる風を切り裂く感触、口と鼻で感じる空気の味と匂い。
全身でペダルを踏みしめてさらに加速するときの筋肉の震えと、ブレーキを握りしめる時に感じる重力加速度。
五感以上の感覚で伝わってくる圧倒的なリアリティがそこにある。

ロードバイクには実存しかない。
あらゆる虚構を投げ捨ててぼくは叫ぶ。
「これが人生だ!」
と。

島牧村をひた走る

山を下ってからは海岸線沿いをひたすらに走る。
晴れの予報だったのに小雨が降り始めたけれど、冬用ジャージのおかげでなんてことはなかった。
10km走ってセコマにたどり着いたので、ここでおにぎりと唐揚げを買って朝食とした。
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セコマは時折謎メニューを出すのでついつい買ってしまう。
山わさび明太は刺激×刺激で目が覚める。
アジア風ラー油チキンは「余計なことはしなくていいかな」感があるw

ルートを計画した当初はここから山に入って賀老の滝を目指したり、山奥の温泉宿で日帰り温泉を楽しもうかとも思っていたんだけど、あいにく秋はヒグマ的にはハイシーズンなので今回は断念。
それは初夏に来る時にしよう。


幸いにして雨はすぐに止んだので、早々に再スタートした。
風はずっと向かい風だけど、ブルベじゃないのでペースを気にせず出せるスピードで淡々と進む。
向かい風攻略のコツは「気にしない」ことなのだと分かってきた。
向かい風で遅くなるなら遅いなりに走ればいいのだ。
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人がほとんど住んでいないので海はとことん美しく、人が住める余地がほとんどないくらいに迫ってきている急峻な崖はとにかく美しく、マイペースで漕ぎ続けていても飽きるところがない。
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崖をくり抜く長大なトンネルも、自動車が通らないのでむしろ走りやすい。
途中で携帯の電波がまったく届かない場所があって、逆にちょっと感動した。

茂津多岬灯台でDNF

トンネルを抜けたところで「日本一高い灯台」なる看板を見つけた。
setanavi.jp

灯台の高さではなく、建っている場所が一番高いのだという。
そこに行くためには激坂を登らなければならないとのことだけど、ここまでひたすら平地を走って飽きてきていたのもあって、ちょっと挑戦してみることにした。
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しかしここやばいっすわ。
10%くらいなら頑張れるだろうと思って登り始めたら直後から15%の激坂が始まり、そしてそれが終わる気配がまったくない。
死ぬ気で1kmほど登ったところで、残りはまだ1.6kmもあると分かって押して登ることにした。

そうするうちに、両サイドを木々で囲まれて薄暗くなってきた。
道には山葡萄やらどんぐりが散乱していて、「これ、ヤバいところじゃん」と直感した。
しかも不幸なことに熊鈴を持ってきていない。

普段のヒルクライムなら最悪ヒグマに出くわしても、道路もなだらかで広いのでダッシュで下れば逃げ切れる。
だけどここの林道は急斜面過ぎてスピードも出せない(崖の下に落ちる)し、サイドから現れたら方向転換するいとまもなくバッサリやられる自信があった(いやな自信だ
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そんなわけでここは潔くDNF。
こういう場所こそ休日の、観光客がわいわい登ってきている日に挑戦したいものだ。

海鮮丼で完全回復

この後は何事もなく南下して、㈲ヤマヨ斉藤漁業/漁師の直売店で昼食。

www.yamayosaitoh.co.jp

メニューは豊富で海鮮カレーや定食もあるのだけど、ここまで来たならやっぱり海鮮でしょう。
海鮮丼、三色丼、アワビ丼が横並びで2,100円。
しばし逡巡するも、生のアワビはあまり好きじゃない(焼いたほうが好き)し、三色よりかはバリエが豊富な海鮮丼とした。
「生うにが終わっちゃってて塩うにになるけどごめんね」
とのことだったけど、いまいち正確に違いを把握していなかったので、塩ウニで良しとした。
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これは優勝じゃないですか。
海鮮丼といえば魚の刺身に注目しがちだけど、ホタテがブリブリで甘くてホームランだった。
なにせ、注文してから生簀から取り出して捌くのだから鮮度の鬼ですよ。
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そして伏兵だったのが塩ウニ。
生ウニ丼を偏愛するあまり毎年積丹まで食べに行く私だが、ここの塩ウニの旨さには唸った。
ウニの風味がギュギュギュっと凝縮されて超ウニだよこれは。
ウニ臭さも倍増するので好き好きだけど、個人的には全然ありだね。
シーズンオフも存分にウニを楽しもう。

今金町で天空に続く螺旋農道に出会った

このあとは美利河ダムを越える山越えがあるので、せたな町のローソンで水と氷とゼリーとポカリを補給。
秋とはいえ、飲み水は冷たいほうが口の中がさっぱりしていい。
逆にポカリはぬるくても、薬だと思って飲めば気にならない(笑

そこから今金町に入り、じゃがいも畑の間ののどかな道を、枯れた藁の匂いを嗅ぎながら軽快に漕いでいたら、目の前に謎の構造物が現れた。
え、なにこれ。
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カメラにまったく収まる気がない、巨大な螺旋回廊。
説明を読むと丘の上の農地につながる農免道路らしいのだけど、農道のためにこれほど巨大な構造物を作る意味が分からずさらに混乱した。
だって普通は崖を削って作るじゃんね。

調べてみると農免道路とは、農業用に使う軽油は免税してよ、という農家からの訴えに起因するようだ。
漁業の場合は漁船に使う免税軽油というのがあるもんね。
だけど農家の場合は軽油を何に使うか限定できないので、その代わりに税金相当額を使って道路を作ることになったため、各地にバブリーで豪華な道路が乱立したらしい。

いや、こんなの見つけちゃったらロードバイク乗りとしては登ってみるしかないじゃん。
秒速でそう判断して登り始めたんだけど、これがめちゃくちゃ怖い。
なにせ、空中になんの支えもなく(あるけど)浮かんでいるだけなので、風は強いし吹き飛ばされて地面に落ちそうで超怖い。
だけど上からの眺めは絶景!!!
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補給のために買ってきた豆大福を食べながら、しばし天空の光大橋から今金町を堪能した。

美利河ダム

この日最後の山場は美利河ダムまでのヒルクライム
日没前に帰れるように走ってきたのだけど、今回は途中で温泉に入らなかった(湯冷めしそうだったので)ために時間があり、ダムを見学してから帰ることにした。
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ダムができてサクラマスが遡上できなくなったため、ダムを迂回して長大な魚道が作られており、それを横から見られる窓が楽しかった。
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ヤマメ釣りも楽しそうだなあ。
ロードバイク&登山も良さそうだと思ったけど、渓流釣りと組み合わせるのもアリか。


最後は国縫漁港を覗いて終了。
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距離的にも獲得標高的にもちょうどいいライドだった。
150km以上200km未満くらいだと楽しんで走れて、翌日にも響かないからいいね。

というわけで今回のRelive。

半島を横断して二海郡の二つの海、日本海と内浦湾を一度に見るとロングライド感があっていいね。
ろんぐらいだぁずによるとこういうのは、C to Cというらしい。

それにしても今日は、島牧村のスノーシェルターといい、ロードバイクに乗っていなければ出会えなかった景色ばかりだった。
目的地に移動するための手段ではなく、移動すること自体が目的だから、こうやって寄り道をして楽しむことができる。
ロードバイクに乗り始めてからというもの、人生が豊かになる一方だなあ。

紅葉が色濃くなる季節なので、雪が降る前にどんどんライドに出かけておきたいと思った。