今回はロードバイク Advent Calendar 2023の21日目の記事ということで、パリブレストパリに参加したことを振り返ってみたいと思います。
adventar.org
これまでのあらすじ
いまから3年前、2020年の5月に最初のロードバイクであるラレーCR-Aを購入しました。
それまで全然運動らしい運動をしたことがなく、でもまあロングライドは楽しいし、ということで翌年の2021年から本格的にブルベに出るようになり、2022年には300kmと400kmのブルベを完走して調子に乗ってPBPにエントリー。
2023年には初のSRをゲットしてPBPに出場し、無事に完走することができました。
どのくらいの脚力が必要か
自分は脚力も3.0w/kg未満、いわゆる貧脚と並脚の間くらいしかないので、ヒルクライムは苦手。
冬の間はZWIFTで鍛えて3倍近くまで上がるんですが、雪解けからブルベを走り始めるとどんどん筋力が落ちて、次の冬には2.5w/kgまで落ちているという有様です。
パリブレストパリは1,200kmという長距離に加えて、獲得標高は12,000mを超えている難コースですが、このくらいの筋力でもきちんと完走できたので、完走のためにはパワーよりもむしろ無理せず長く乗る能力の方が大事だと思いました。
めちゃくちゃ厳しいヒルクライムがあるわけじゃないし、無限に続くアップダウンを延々と繰り返していく感じなので、効率よく走る方がやっぱり大事。
本州は信号が多いから何とも言えないですが、北海道のブルベでグロス20km/hで走れるくらいの脚力があれば十分だと思います。
コースはどんな感じか
PBPは延々と続く丘陵地帯にどこまでも続く農村を舞台にしており、これが本当に北海道にそっくりでした。
完全な平坦は無くて、なだらかに登ってなだらかに下るパターンが無限に繰り返されるのも一緒なので、北海道の道で慣れて下りの勢いで次の登りを越えられるようにすると、PBPのコースはほとんど平坦化するのでオススメです。
自分が直前に走ったトカプチ400は距離400kmに対して獲得標高は3,700mでPBPとほぼ同じ割合なので「これを3回走るのだ」とイメージトレーニングしながら走っていました。
コース上に信号はほぼ無く、コンビニみたいな気軽に補給できる場所も全然ないのも北海道に似ているので、むしろ道民有利説までありますw
費用はどのくらいかかるのか
自分は海外輪行自体が初めてだったので、無難にグッデイツアーさんのパック旅行を利用したので結構な金額になっています。
www.goodwilltour.com
ツアー代金が568,400円(海外旅行保険・国内運賃16,000円含む)、現地で使ったお金がクレジットカードで10万円、エントリー費用が4万円かかるので、合計70万円くらい。
実際はこのほかに輪行箱を買ったり新しいパーツを買ったりしているので、トータルで100万円くらいは使った気がします(汗
このうち、旅費については旅慣れている方は自分でチケットや宿を確保するようですが、それでも最低50万円くらいは必要になるようです。
20万円の差は結構大きいんですが、完走することを目的にするんだったら初回はツアーの方が考えることことが少なく、不安材料も減らすことができるので個人的にはツアーで行って良かったと思っています。
日数はどのくらいかかるのか
ツアーは8月18日(金)出発で8月26日(土)までの日程でした。
ちょうどお盆休みが取りやすい時期なので、一週間+α休めば行けるPBPは日本人向きだと思います。
日本国内はその時期暑すぎて自転車になんて乗っていられないけど、フランスは北海道よりも北にあるうえに蒸し暑くないので、そこそこ快適なところもポイントですね。
(台湾とか暑すぎて行ける気がしない)
言葉は通じるか
実はPBPに行くにあたって、本を買ったりアプリで勉強したりもしたんですが、全く身につきませんでした(爆
男性と女性で活用が変わったり冠詞が違ってみたり、言語として謎すぎる。中国語は台湾旅行に行く前に軽く準4級がとれたので甘く見ていました(汗
でも実際問題、参加者のほとんどがフランス語できないので、テキトーな英語で全然通じます。
唯一通じなかくて困ったのが「水」。
ウォーター(日本語読み)でもワラ(英語っぽく)でもオー(フランス語風に)でもダメ。
アクアといえば通じたというけど、それイタリア語じゃん!
フランス語はボンジュールとメルシーだけ言っておけばばっちりです。
機材はどんなものが必要か
ロードバイク自体は、最初に買ったクロモリのエントリーロードバイク、ラレーCR-Aを持って行きました。
ブルベは荷物が多くなるので、バイク自体が軽量でなくてもたいしたハンデにならないうえ、やっぱり飛行機輪行だとクロモリの丈夫さが頼もしいですね。
ただしフレーム自体はそのままでも、この3年間の中でパーツは結構改造を加えており、ホイールはゾンダに替えたし、ラレーCR-Fの純正カーボンフォークにPRIMEのカーボンハンドル・カーボンシートポストを導入して快適性を上げています。
一番大きな改良点はコンポをDi2に変更したこと。
もともと9速のSORAがついていたんですが、去年の11月にウナギ600を走った際に手の痛みから変速が困難になり、無理して重いギアを踏んで足首までおかしくするということがあってアップグレードを決意しました。
結果的に、アップダウンが多いPBPのコースにDi2はバッチリハマっていました。
変速が快適なのでちょっとでも負荷を感じたらすぐにギアを下げられるし、下り坂で一気に加速したいときも長押しすればバンバンバンと一気にトップギアに入るし、PBP完走の一番の立役者だと思っています。
あとは延々と走ることになるのでDHバーは必須。
昼間は暑いし水の補給も難しいので、ダブルボトル体制もマストです。
自分はサドルバッグスタビライザーにもう一本ボトルを追加していました。
持って行かなくてよかったもの
基本的にいつもの400kmブルベと変わらない装備だったのでPBPだからあえて増やしたものは無かったんですが、いま改めて思うといらなかったな~、と思うものが結構ありました。
厚手のジャージ
昼間暑いので袖が取り外せるスリーシーズン対応のジャージを持って行ったんですが、暑いときは袖を取り外したくらいではどうにもならないし、逆に腕が日焼けして体力を消耗するのであまり便利ではありませんでした。
たぶんジャージは夏用の長袖が3枚あれば十分だと思います。その代わり、ミレーの網インナーとジオラインの「厚手」を持って行った方が良さそう。
この前の札幌のブルベでは、PBPジャージの下にその2枚を着ていれば気温10℃でも普通に過ごせたので、フランスの夜でも十分耐えられると思います。
逆に昼間の暑さは本当にキツかったので、昼に寝て夜走る作戦をとるのも悪くないと思いました。
大量の補給食
途中で食べ物を買える店が全然ないからと大量に買い込んで行ったんですが、すぐ味に飽きてしまって全然食べられませんでした。
基本的に自分はPCのレストランでガッツリ食べる派だったので特に問題はありませんでしたが、どうせ持って行くのなら「補給食」という観点ではなく、機能性より美味しさを重視して普通のお菓子とかが良かったと思っています。
ボトルに溶かす粉もはりきって高いのを買っていったら、そんなに美味しくないうえにぬるいと地獄みたいな味になってしまって失敗したりもしました。
こういうのも緑茶や麦茶の粉末を持って行った方が、普通に飲めるのでいいかもしれません。
持って行ってよかったもの
逆に、これはよかったなとおもったのは塩熱飴。
味が3種類あって食べ飽きしないし、電解質も補給できるので完璧でした。たまたまラジオ番組(ハライチのターン)のプレゼント企画で1kg入りが当選したため大量に持って行ったんですが、普通に50個くらい食べてたと思います。
あとは、Audax Japanが作っていたおみやげバッジも良かったです。
www.ar-nihonbashi.org
私設PCでは基本的にお金を受け取ってくれないので、こういったものがあると便利でした。
ただこれも微妙にかぶるパターンがあるので(1度だけ「またコレか」顔をされた)、例えば弱虫ペダルの缶バッジだとか、そういったアニメグッズでもいいかもしれません。
実際に走ってみたデータ
baruさん作成のPBP2023_計画シートをiPhoneのスプレッドシートに入れて、PCごとに確認しながら走っていました。
計画と実走行のデータおよびその差分は以下の通りとなります。
全体的にPCで予定よりも多く過ごし、その代わりにルデアックでの滞在時間(往復5時間ずつ)を削った感じです。
ルデアックでちゃんと長い時間寝ていたら道中での昼寝の回数が少なくて済んだかもしれないけど、どっちにしても眠くなっていたかもしれないのでどちらがいいかは難しいところ。
コースの難しさでいうと、やはりルデアック~サンニコラ、ブレスト~カレ=ブレゲール、グアレック~ルデアックの、平均斜度が1%を超えているところが大変だったようです。
斜度が0.99%でも20km/hを平気で出していたりするので、1%未満か以上かで難易度は大きく違いました。
あと大変だったのは後半の夜に眠すぎ問題ですね。
PC11~PC13までは寝ては走っての繰り返しだったうえ、1000km越えたあたりから尻の皮が限界を迎えていたのも原因でペースが上がりませんでした。
それでもなんとかマージンに余裕を持ってゴールできたので結果オーライです。
完走するための秘訣
ここまで旅の費用やハード面について書いてきたので、最後は技術について。
自分は筋力も体力もそれほどあるわけではないので、「自分のペースを守って延々と走る」ことをメインに考えることにしました。
そのために一番効果的だったのは、最終組スタートを選んだことだと思っています。
あえて最終スタートという手
PBPは6,500人ほどの参加者がおり、一斉に走ると大混乱なのでそれぞれ300人程度のウェイブに別れて15分おきにスタートするという仕組みになっています。
人気のあるのはスタート順が早い組で、プレレジも早い時間から埋まっていくんですが、自分はあえて最終スタートを選びました。
遅い組の何がいいかというと、後ろから追いついてくる人がいない、というところ。
PBPで最も大事な場所はPCで、ここではブルベカードにスタンプをもらうだけではなく、食事をしたり水を補給したり、仮眠を取ったりと様々な役割があります。
ここが混んでいるとそれだけタイムロスが増えてしまうので、なるべく効率的に過ごす必要があります。
前の組の場合は到着してからそこで過ごしている間にどんどんと次の組がやってきて、PCは混む一方。
逆に最終組の場合は後ろから追いつかれる心配がないので、最初の800kmくらいまではそれほど並ばずにレストランを利用できたりしたので助かりました。
脚力がある人ならば前の組の方が他の人を突き放すことができて便利ですが、そうでない場合は後ろの組の方が楽だと感じました。
また、後ろの組は精神的にも楽、というのが大きいと感じました。
自分と違うU組以外のゼッケンプレートを見れば自分よりも先に出発したグループだと分かるので気分も楽になります。
(これがP組とかだと、ブルベ中の思考能力が低下した頭ではPより前か後か理解するまでに1分くらいかかりますw)
前の組だと自分よりあとのグループに次々と追い越されることになるから、結構なプレッシャーになるんじゃないかなあ。
PCのレストランでがっつり食べる
最終組スタートの一番のメリットは、PCでゆっくり食事をとれたことだと思っています。
並んでしまうと時間も体力もロスするけれど、帰りのルデアックまでは並んでいても数人くらいだったので悠々と食事をとって、その後はそのままテーブルで仮眠をする、というパターンでした。
レストランだとバナナやヨーグルトも食べられて栄養バランスもいいし、特に暖かい野菜スープは、暑さで疲れた胃を回復するのに役立ちました。
フランスには自販機というものがないので、常温とはいえコーラを毎回飲めるのも良かったです。
他人のペースに乱されない
走行中のポイントは本当にこれだけです。
DHバーを握りしめて骨伝導イヤホンで好きな曲を聴きながら自分のペースで延々と走るだけ。
トレインは絶対自分よりも速いか遅いかなので足に負担がかかるし、前が良く見えないと道路の状況が分かりにくくなるのでソロの方が精神的にも楽でした。
疲れたら寝る、寝たら走る、自分の体力に合わせてそれを繰り返しているうちにゴールしたという感じです。
実は序盤のPC1で日本人同士で「準備が遅い」だの「予定より遅れている」だのケンカしている人たちを見てしまったので、より「一人で走って良かった」という思いを強くしたというのもあります(笑)
まとめ
そんな感じで今回は、実際にPBPを完走してみて「これは良かった」と感じたポイントをまとめてみました。
次回のPBPは2027年になりますが、4年あればいまからロードバイクを買っても全然間に合います。
世界最大のブルベのお祭り的イベントなので、一生に一度は参加してみる価値ありありです。
その際にはこのブログが少しでも役に立ってくれたら嬉しいです。