VILLAINES-LA-JUHELの食堂で仮眠をとっているうちに7時を過ぎて、ようやく日が出て暖かくなってきたので、そろそろリスタートを切ることにした。
ここまで200km走ってきたので残りは1,000km。
まだまだ先は長い。
スタートしてからずっと夜だったので、ちゃんとお日様が出ている中でコースを走るのは初めてで、これが本当に楽しかった。
車通りが少ない田舎道がコースになっているせいもあるけれど、だいたいは村と、村の間にある農村地帯を通っている。
農村地帯はちょうど帯広みたいな雰囲気で、牛を飼っていたりトウモロコシ畑があったり、牧草ロールが転がっていたりしてテキトーに写真を撮って見せたら絶対十勝と間違われると思う。
丘陵地帯はゆるやかなアップダウンになっていて、まったり登ってまったり下るを繰り返す感じ。
せいぜい3%あるかどうかの傾斜なので登っていてもほとんど平坦と変わりがないし、逆に下りでは調子よく重力エネルギーを使えるので自分の感覚でいえばずっと下っているぐらいの気分だった。
平坦か下りしかないのでソロで走っていても無理せず20km/hオーバーを維持できるのでコース設定はとにかく楽。
12,000mも登らされる恐怖のコースだと喧伝されていたけれど、個人的には一部少し登らされるくらいで、ほとんど平坦コースだろうと思っており、まさしくその通りのイメージだった。
ちょっと登るのは村に入るときで、まさに中世そのままなので守りが固めやすい丘の上にあるのでここだけちょっと勾配が厳しい。
登っていくとバンプがあって、村の中央には教会がある。
この教会が村それぞれに特徴があって面白い。
どれひとつとして同じものは無いし、もっとちゃんと写真を撮ってくればよかった。
前回出た人からはずっと同じ風景ばかりだから飽きるよと言われていたけど、全然そんなことはなかったなあ。
村にはうまく行くとブーランジェリーがあったり、もしくは私設エイドが出ていたりするのも嬉しいポイント。
PBPのキモは私設エイドで、ここでうまいこと補給したり地元の人とコミュニケーションを取りながら走れると楽しい。
コーヒーは結構無料で飲めるところが多くて、それ以外だと水にシロップを混ぜたジュース(結構嬉しい)だったり、ミネラルウォーターを入れてくれるパターンもある。
ちょっと厳しいのが水道水で、硬水だからとかじゃなく、カルキ臭がとんでもなく強いのだ。
コントレックスならごくごく飲める自分でもこれは無理。
むかし修学旅行で大阪に行ったとき、たこ焼き屋で出された水がこんなだった印象があるので、都会の人ならもしかしたら気にならないかもしれない。
でも、同室のいしさんはレース中から帰国までずっと腹を壊していたというし、水のせいもあると思う。
少なくとも自分はスポドリの粉末を溶かしても全然飲めない味だったので、水分補給はもっぱらミネラルウォーターに頼っていた。
PC2 FOUGERES(8/21 11:30 292km)
そんな感じで風景を楽しみながら89km走ってPC2のフジェールに到着。
この区間も21.73km/hで走れたので、予定時刻よりも1時間以上早く到着できた。
早く着いたからにはその分PCでゆっくり休みたいというのが人情である。
ここはレストランがとても良かったなあ。
汗をかいて電解質が欲しいからフルーツ多めに積んでいたら、メインにどでかいジャンボなジャンボンがあったので思わず注文。
走るために必要なのは炭水化物だけど、肉を食うと元気が湧いてくるのでやめられない。
最終組だったのでレストランはほとんど混んでおらず、食べながら椅子に座って休めたのが完走の秘訣だったかもしれない。
(そもそも混んでるときは並ばないでパスしたけれど)
そして予定出発時刻までは、芝生でゆっくりとお昼寝。
これもPBPの醍醐味の一つだ。
フジェールにはトータル1時間半くらい滞在して、疲れもすっかりとれたところでリスタートを切った。
しかし、暑い。
13時を過ぎてから気温はみるみると上がり、30℃以上になってしまった。
ここはちょっとだけ向かい風基調だったかな。
風があると生きていけるけど、追い風になると暑さで死にそうになる。
暑熱順化が必要なレベルで熱いなんて聞いてないよ~、と叫びながらPC3のタンテニアックに到着。
PC3 TINTENIAC(8/21 15:36 353km)
命がかかってるとなったら、まあ飲みますわな。
PCで絶対的にキンキンに冷えている飲み物は生ビールしかないので、生きていくために仕方なく飲むしかないのですよ。
PBP豆知識として、基本的に飲み物はコーラ、オランジーナ、レッドブルしかない。
あとは(あれば)謎の紙パックジュースと、炭酸水と、ミネラルウォーターくらい。
種類が少ないのはいいとして、こんなに暑いのに冷えてるとは限らないのがなにより悲しい。
常温のコーラーを飲むことのわびしさったらない。
暑さでかなり胃にダメージが来ていたので、消化吸収に良いものを取り揃えて流し込む。
ノーカロリー・ノーライド。
このあとリスタートして、ケデアックに到着したのはここを出発しようと思っていた18時になっていた。
タンテニアックでのんびりしすぎたため、計画よりもだいぶ遅れることになった。
けどまあ、ルデアックで眠る分を先取りしていると思えば許容範囲。
当初はスムーズに立ち去るつもりだったけど、暑さによるダメージが残っていたのでここでも小休止を取ることになった。
WP2 Quédillac(8/21 18:00 378km)
しかしケデアックここは外れWPだった。
まずひとつめは、食堂にはロクな食べ物が残ってなかったのでペリエとバナナくらいしか補給したくなるようなものが無かったこと。
(飲み残したペリエはボトルに詰める)
そして食堂から出てみると、自転車の様子がなにか変だ。
DHバーも曲がっているし、ヘルメットにつけてるバイザーも無くなっている。
ここはサドルで吊り下げる駐輪場ではなくて柵に立てかけるタイプだったため、誰かがひっかけて倒してしまったんだろう。
しばらくバイザーを探すも見つからず、このあとは裸の眼鏡で走ることを強いられたのは結構辛かった。
特にここからブレストまでは西に向かってひた走るので、夕日をダイレクトに浴びる羽目になったのは想定外だった。
仕方がないのでDi2を充電しつつ芝生でふて寝。
次のルデアックでモバイルバッテリーを交換するので、ここが充電のタイミングかな、と。
事前に満充電から900kmくらい走れることを確認していたので、400km手前で充電するのがポイントだった。
(ルデアックで充電しても良かったんだけど、PCが混んでいそうだったのでやめた)
それにしても、この程度の手間でいいのならDi2の利点はめちゃくちゃ大きい。
ケーブルがないから気軽にRDを取り外せるし、懸念していたバッテリーもシートポストから外してしまえば手のひらにおさまるサイズだったので、輪行でも何の問題もなかった。
Di2は、PBP攻略のための「3つのD」のひとつといえる。
変速のストレスが極限まで少ないので、無限に続くアップダウンを苦も無く乗り越えられる。
600kmブルベを走ったときは手首が痛くてフロントの変速ができなくなり、変速するのが手間になって横着して重いギヤで踏んだ結果、今度は足首までも痛めたりしたのでスイッチ感覚で変速できるのは本当に便利だった。
ふたつめのDは「DHバー」。
もちろん空気抵抗を軽減する効果も大きいし、握るポイントが増えるから手のひらのダメージを抑える効果も大きい。
でももっとも効果が大きかったのは、本当の意味で「ダウンヒル」バーとして使えたこと。
むしろ北海道でよりも、その真価を発揮できたと思っている。
そしてみっつめのDは、なんといっても「ド根性」かなw
疲れたらところかまわず寝ちゃうとか、わざわざ混んでいるトイレに並ばないとか(意味深)、郷に入っては郷に従えをするためにも根性が必要なんだなあ、と思った。
そんな感じでPBP2日目の昼間は、予想外の暑さにバテつつも貯金を3時間ほど稼いでまだまだ余裕ペース。
前半戦を折り返してしまえば完走が見えてくるので、大変なのもあと200kmちょっとという感じになった。
というわけで次回は折り返しのブレストまでの模様をお送りします。
PBPは平坦ばかりだといったな、あれは嘘だ!!!