PikaCycling

Raleigh CRAとDAHON routeを買ったばかりのサイクリング初心者。ポタポタとポタリングを楽しもうと思っています。

【Road to PBP2023】PC11からGOAL RAMBOUILLET(1,222km)

ペルシェのPCには、いつにもまして芝生ゴロ寝団が多かった印象。

さすがに1,000kmを超えてみんな体力が限界なんだろう。
自分もここで30分ほど仮眠をとって、ナイトライドに備えて昼間の疲れを取った。

日没からしばらくして、21時40分ごろにリスタート。
PCのクローズ時間は22時20分なので、まだまだ余裕はある。

しかし走り出して1時間もたつとまた眠くなってしまう。
昼間だと走行中に眠くなることはほとんどないので、暗くなって目に入ってくる光量が少なくなるせいなのかも。
顔をライトで照らしながら走ればマシになるかもしれない。

野外で夜に寝るにはコツがあって、ひとつは、街灯があるところ。
完全に真っ暗なところだと危ないので、寝てるのが道路から丸わかりなところの方がいい。
それともうひとつは、他のサイクリストも寝ているところ。
だいたい良さそうなポイントにはゴロゴロと何台も自転車が転がっているので、そーゆーところに混ざって寝ることにしていた。

立ションされてるかもしれないのに外で寝るのは嫌だという神経質な人もいるけれど、街灯にピンスポットで照らされてる下でする人もいないし、寝ている人の隣でする人もいなかろう。
それにまあ、そもそも全身汗臭いんだから多少ションベン臭くなってもあまり変化は無いだろう、というのもあるw

要は、気にしすぎな人の話を気にしすぎる必要はないよ、ということ。
だいたいブロガーなんて(自分も含めて)自分のなした決断の正当性を高めるために理論武装しがちなので、話半分どころか1/100くらいにして聞いていた方がいいんだよね、マジで。


天井に天の川が広がる世界一豪華な帝国ホテルで目を覚ますと、今度は腹が減ってきた。
補給食はあるけど食べ飽きているし、私設エイドでもないかしらん、と思いつつ走っていると、なんと街の中に深夜営業のケバブ屋さんが!

混みすぎていてジュースが売り切れだったのは残念だったけど、このジャンキーな風味は疲れ切った体には最高のごちそうだった。

しかし、食べると眠くなるのが人間の生理というもの。
再び1時間ほど走るとまたウトウトとしだして、今日はアニソンメドレーを歌いながら眠気を我慢して走り続けた。
限界を迎えそうなその時、今度は大規模な私設エイドを発見!!!

コーラのカフェインと糖分がたまんねー!!!

ここのz自転車博物館はかなり有名な施設エイドらしくて、中には仮眠所もあってかなりにぎわっていた。
場所に余裕があればここで1時間くらい寝ていたかったなあ。

さらに走り出して、また1時間たつと眠気に我慢できなくなってきた。
自分の場合、からだが限界を迎えると幻覚が見えてくる。
具体的には看板に書いてある文字がフランス語ではなく、日本語に見えてしまうのだ。。
文字が目に入ると一瞬、モザイクが入った漢字のように目に映る。
AIに文字を書かせると意味の分からない漢字風の模様になるじゃないですか、ちょうどあんな感じ。
それからブブブッと揺れて本来のフランス語の字が現れるようになる。
多分脳の処理能力が無くなっていて、普段見慣れている日本語へと雑に判読しているのかもしれない。
2月の追い風400の時は寒すぎて限界を迎えて、道路沿いに立ち並ぶ看板が全てコンビニのものに見えたりした。
こーゆーときは無理せず休憩するに限る。

そんな感じで、勝負の行方は寝るか寝られるかみたいな雰囲気になってきた。

PC12 Mortagne-au-Perche(1,099km)

途中休憩が多すぎて、復路のペルシュにたどり着くまで82kmの道のりを7時間近くもかかってしまった(多分ほとんど寝ている)。
ただしこれだけノロノロ走っていてもアベレージは12.12km/h出ているし、制限時間的にはまだまだ余裕。

残り100kmを10時間で走ればいいうえ、日が昇って眠気とおさらばできれば仮眠時間も減るから大丈夫だろう。
ここでも30分ほど仮眠をとってからリスタート。

しかしまだまだ眠気との戦いは続く。
ペルシュを5時30分に出て、徐々に地平線のあたりが白ずんできた。

もうすぐ夜明けだ、これで勝つる、と油断したその時、

ガクッと姿勢が落ちて気が付いた。
寝てた! 転ぶ? 右に芝生! そっちだ!
寝落ちから覚めてからの一瞬の判断で、道路側ではなく右側の芝生に突っ込んだ。
倒れ込んでから芝の上をザーッと滑って、そのまま溝の中に突っ込んで停まった。
田舎で道路に縁石がなかったのはラッキーだった。

慌てて起き上がって自転車を溝から引っ張り出す。
後ろを追走していたイギリス人っぽいカップルが心配して声をかけてくれた。
大丈夫かというので体を触って確かめてみると、血も出ていないし骨も折れていなさそうだった。
幸い、芝に向かって腹ばいに滑り込むようにして倒れたので大きな負傷はなさそうだったし、自転車もリムブレーキがずれたくらいで特にダメージは無かった。

と、この時は思っていたけれど、帰国してからクシャミをすると胸のあたりが痛くなることに気が付いて、レントゲンを撮ってもらったら案の定肋骨にひびが入っていた。
眠くてダラダラと漕いでいたおかげでそれほど強い衝撃じゃなかったけど、これが本格的なダウンヒルの途中だったらと思うと恐ろしい。

落車のおかげで一気に覚醒して、やがてようやく夜が明けてくれた。
途中にあったTABACで、エスプレッソをドッピオにしてもらい、クロワッサンとともにたいらげる。

やがてマイユボア城が現れて、ドルーの街が近づいてきた。

ここから先は見渡す限りの田園風景の中を、ひたすらまっすぐに走り続ける。

帯広あたりだと四方を山脈に囲まれているのに対して、このあたりは地平線までずっと畑なのでスケールの違いを感じる。

そういえば、どこかの私設エイドで会った日本人の参加者に「フランスの道は十勝地方によく似てますねえ」という話をしたら、その人はPBPに4回連続で出場しているとのことで「だったら北海道で走っていろよ!」と吐き捨てられたので、あまりこーゆーことを言わない方がいいかもしれないw

PC13 DREUX(1,176km)

ドルーの街は平地にあって、かなり都会っぽい印象だった。
住宅街も整っていてオシャレで新しい感じ。
ただ、ここのPCはゴールから一つ手前ということもあって、あんまり力が入っていない印象だったかな。
最終組のクローズまで残り1時間ということで本当に店じまいモードだったため、残っていたフルーツとパリブレストで朝食にした。

泣いても笑っても残りは46km。
最後まで走り切るしか選択肢はない。


スタートしてしばらくすると、T組のバッジを付けたイタリア人が追い越していったので、後ろについていくことにした。
しばらくいいペースだったんだけど例のごとくダウンヒルで追い越してしまうので、再びソロで走る。
その後結構な登りがあってのろのろと這い上がっていると、今度はそのイタリア人が5人くらいのトレインになって追い越していった。
これはちょうどいいと思って自分も追いつくと、しばらく先頭を走っていたイタリア人がジェスチャーで「お前が引け」というので先頭でガチ踏みした。
もう体力を残していても仕方がないし、ガンガンに攻める。

ひとつ街を越えたところで今度はやんちゃな感じの青年が前に出て、でたらめなフォームでガシガシと踏む。
トルクをかけて自転車を左右に振りながらパワー系で走るので、よくそれでここまで走ってこられるものだと感心した。

そのあと再びイタリア人が引く段になって、めちゃくちゃ腹が減っていることに気が付いた。
ポケットを探っても、トップチューブバッグを探っても補給食は売り切れ。
困ったなあと思いながら背中のポケットを探っていたら、さっきのやんちゃな青年が「はらへってんのか?」と言わんばかりに食べかけのスニッカーズを譲ってくれたのでありがたくいただいた。

しかしここまで20kmほど爆走して、完全にハンガーノックを起こしそうだったので途中の街で脱落し、パティスリーに寄ることにした。

糖分を補給して、残り20kmの準備は万全。
最終組だと自分より前の組の人たちによる完全ギリギリトレインがよく追い越していくため、便利に活用できた。

そんな感じで残りの区間も快調に走り切って、無事にランブイエにゴール!!!

タイムは88時間1分。
2時間残しているけれど、最後2つの区間で稼いだだけなのでむしろこれ以上遅くゴールするのは難しいレベルだし、本当にギリギリ隊だった。
PCに滞在しすぎ(19時間もいた)というのと芝生で寝すぎというのがギリギリになった原因ではあるけれど、それらの時間を短くして、代わりにたくさん寝れば解決したかというと何とも言えないところだ。
戦略うんぬんよりも、単純に体力がないから寝ないといけない→ギリギリの体力だったのでギリギリのゴール、というのが真相だろう。


なんといっても往路600㎞を38時間、復路600㎞を50時間だもんね。
特に900kmを越えて1,100kmまでの区間は、眠さも体力も限界を超えていて厳しかった。
これまで600kmまでしか走ったことは無かったんだけど、復路のルデアックまではなんとかなった。
そこから4桁に突入すると大変さが異次元のレベルに入るんだなあ、ということが身にしみて分かった。

だけどよく頑張ったよ、オレ。
痛みに耐えて良く頑張った、感動した。
自分で自分をほめてあげたい。

そんなことを考えながらゴールゲートをくぐると、人が全然いない。
クローズまで残り2時間、PBPというイベント自体がもう終わりそうな時間の上に、いきなり雨が降ってきて観客は帰り支度を始めている有様で、あまりのさみしさにちょっと泣きたくなってしまった。
これならPC11のヴィレンヌ・ラ・ジュエルの方がよっぽど盛り上がっていたわい。

と思っていたら、ゴール受付のあたりにはまだたくさん人が残っていたので安心した。
そういえばスタートの時もそうだったけど、スタート地点から計測ゲートまでの間は、延々となにもない砂の道を走らされるのだった。

自転車を駐輪場に停めて、ブルベカードにハンコをもらってその場でメダルもいただいた。
ブルベカードは回収されず、そのまま返却されるというのが面白い。
紙で集計するのも返すのも大変だから、認定は全部ICチップでやっちゃうのかもね。

その後はミールチケットをもらって昼食タイム。

結構いいもの食べたような気がするけれど、メダルが邪魔で全然見えないw
例の「ラストビール」も当然いただいて〆。
このあとは知ってる顔でも探してみようと思ったんだけど、そもそも自分より早い組の人は午後1時になればとっくにゴールして帰っている頃合いだし、雨も降ってきたしホテルに戻って帰国の準備をしなきゃだし、早々にゴール会場を後にした。

という感じで、初挑戦のパリ・ブレスト・パリを無事に完走できました。
1,000kmも走ったことがない人間がいきなり完走できたことの心当たりはいろいろあるけれど、反省や分析はまたの機会にまとめることにして、とりあえず次回は帰国編。
羽田に到着してから乗継便まで、1時間半しかないのに大丈夫か!? はたして無事に函館に戻れるのか、こうご期待!