メッセンジャーバッグでおなじみのCHROME社から「新作のサイクリングシューズのレビューをしていただきたい」という驚愕の依頼を受けて試していたんだけど、なんと全3回におけるロングレビューになってしまった。
まあ、「モノがいい」んだよね、これだけ書けるというのは。
送られてこなくても自分で買って感想を書いていたんじゃないかと思うくらいの代物なので、プロモーションとはいえ力が入ってしまう。
力が入ったついでにせっかくのSPDモデルだからと、わざわざクリートを新しく買ってKRUSK AW PROに装着してみることにした。
購入したのはシングルモードのクリート。こちらは足を外側に捻ることでビンディングから外すことができる。
一方、マルチモードという、上下左右どちらに動かしても外すことができるクリートもある。
立ちゴケ防止にもなるらしいんだけど既にシングルモードに慣れているし、遊びが大きいらしいので自分はマルチじゃなくていいかな。いつも使っているのもSPDシューズなので、取り付け位置を似たような場所に合わせれば楽勝に取り付け完了。
しかしSPD化できるとはいえ、本格的なシューズに比べたら落ちるだろうと予想されたのであまり遠出はせずに、いつも走り慣れている八雲の雲石峠を目指すことにした。
そういえばこの前乙部で崩落があったあと、迂回路を通るようになったというので試して見る価値はある。
当日は完全なる晴天で少し前なら生命の危機を予感させるくらいだったのだけど、お盆過ぎの北海道はすっかり秋の風が吹いており、さわやかさしか感じなかった。
しかしこういう川を見ると飛び込みたくなる。
(エキノコックスがいるので無理)
さてSPD化したKRUSK AW PROで雲石峠を登ってみての感想だけど、実はあまり芳しいものではない。
というのも、かかとがカパカパと浮いてしまうのだ。
普段27.5cmの靴を履いている自分には9.5インチが合っているのだけど、CHROME公式の通販サイトには「ハーフサイズ小さめを選べ」と書かれている通りに9インチにしてみたところ、普段履きにはちょうどいいフィット感だった。
これでも踵が浮いてしまうということは、やはり一般的なスニーカー形状だとホールドが甘くなるのだろう。
昨日フラットペダルで履いたときには感じなかったので、つま先を固定された分の反動かもしれない。
ビンディングを付けると「ペダルを回す」ような動きになるのに対し、フラットペダルだと「ペダルを踏む」動きになる。
そのせいか、激坂で強く踏み込むときにはあまり気にならないけれど、緩斜面になって軽いギアで回そうとすると途端にパカパカしてしまう。
例えばサドルをもっと高くして爪先下がりのポジションで漕ぐようにすればKURSK AW PROでも乗れるようになりそうだけど、そのために姿勢をいじるまでの気にはならない。
雲石峠を超えて一息ついていると、モクモクと雲が湧いてきてさらに涼しくなってきた。
写真には映えない天気だけどむしろこれが真のサイクリング日和だったりする。
写真を撮ったりしているうちに二人のローディに追い越されたのだけど、リスタートするや否や彼らを華麗にオーバーテイク。
追い抜きざまにチラ見すると、どちらも初老の紳士たちでかなりの大荷物を装備していたので、もしかしたら北海道縦断などしていたのかもしれない。
そういえば、この日は自転車日本縦断にチャレンジしている人ともすれ違った。
八雲のあたりの国道5号を走っていると通常のローディよりも頻繁に、日本一周チャレンジャーに遭遇する。
自転車日本縦断はブルベと違って何のレギュレーションもないので、時間とお金さえあれば誰でもできそうなものだけど、なぜか一般人から神聖化されていて謎。
肉体的な部分よりも、日本一周できるだけの長期の休みを取れる環境にあるかどうかが一番の課題だ。
働いているうちは無理だとしても、定年後にやりたくなるかどうかは分からないからなあ。
先程追い越した紳士たちのように、無理ない範囲で何泊かの自転車旅行を悠々自適に楽しむくらいはできるかもしれない(完全に妄想だけど)けれど、あえて苦しい目に会おうと思えるだろうかは分からない。
そーゆー意味ではチャレンジできる暇と元気がある若い人がやるのは大変いいことだとは思うが。
そんなこんなで通行止め地点に到着。
崩落箇所はここからさらに先にあって見ること能わずだし、屈強な警備員ふたりが厳重に警戒しているので近づくことさえままならない。
仕方なく素直に左折して迂回路へと入った。
まずは乙部町生命の泉「こもないの水」にて水分補給。
ここは湧水量が少ないのでイマイチ(ちょっとワイルドな味がする)。
乙部町の湧水は全部飲み比べてみたけれど、オススメは能登の水か、この先にあるといの水だ。
迂回路の方は通行止区間が1.8kmに対して17.4kmと10倍の長さがあるけれど、適度なアップダウンがあって走りごたえがあるし、ここまで海岸沿いを走ってきてからの山の中は新鮮な気分になれてむしろ快適。
途中1kmくらい細い道があって注意が必要だけどもともと交通量が多い地域でもないし、通行止めがいつ解除になるかわからない状況にあって突貫工事で拡幅工事が行われていたので、いまにもっと通りやすくなりそう。
そんな感じで快調に漕いで館浦側の通行止め区間へ。
鳥山側は通行止めの手前に迂回路への左折があって慌ただしい感じだったけれど、こちらは住宅地をだいぶ進んだ後の突き当りのため、よっぽど不注意なドライバーしかここまでたどり着かないため平和な雰囲気。
案内しようとする警備員さんに「だいじょうぶで~す」と声をかけて、割と近づいて写真を撮れたので良かった。
この後はいつもの「しおとんこつラーメン嶋」へ。
siotonkotu-sima.jimdofree.com
前日にも家系ラーメンを食べていたのにまたラーメンかよ! と突っ込みたくなる気持ちは分かるが、乙部町で何を食べるかと言ったら他の選択肢が浮かんでこないのでしょうがない。
失われたカロリーを補うため、煮豚丼は当然のチョイス。
ロードバイクに乗り始めて良かったことは2000個くらいあるけれど、「食べたいものを我慢しなくて良い」というのはその最たるものだ。
カロリーは燃えてなくなるし、塩分は汗となって流れ落ちるし、ラーメンを腹いっぱい食べて体に一切悪いところがないというのは、実に素晴らしい。
これでだいたい旅の目的は果たしたので、あとはのんびり帰るだけ。
この日は気温が低くて水の消費量が少なかった上、湧き水で補給したので残量が十分に残っていたのでいつもの氷1kg作戦はおあずけ。
アクエリアスを500cc一気飲みして、ゼリーだけ買って八厚やまぶきラインを目指した。
前回走ったときはもう少しで頂上だというのに途中で諦めて休んでしまったので、今回はもっと麓にあるチェーン装着場で一休みして挑んだ。
自称「北海道で2番めに遅いローディ」なので記録は度外視なんだけども、いちおう自分との戦いというのは常に念頭に置いているのだった。
銀婚湯を下ってきたあたりにある山の露頭が凄い。
ここらへんの川にはアンモナイトのモジュールなんか転がっていないんだろうか。
平和な山の中を抜けるとデスロード・国道5号が待っている。
死ぬほど交通量が多く平均時速は80km/hを超える無法地帯なので、一刻でも早く抜けるべく必死に漕いで、噴火湾パノラマパークを目指した。
ここからミルクロードを走って八雲に抜けるのがジャスティス。
パノラマパークの向かいにあるハーベスター八雲あたりには何か美味しいものがあるだろうと坂を駆け上がると、牛のオブジェがある店に車が沢山駐車しているのが見えた。
motoyamabokujyou.com
これは当たりに違いない、とロードバイクを停めて入店。
ジェラートもソフトクリームもあって相当悩ましかったのだけど、ここは男らしくコーヒー牛乳とミルクのミックスソフトクリームを、ココア味のコーンでいただくことにした。
これはいいね。
ココアの香りがほんのりビターでソフトクリームの甘さを引き立てている。
あと、うっかり写真を失念してしまったんだけど、一緒に注文した氷コーヒーが激ウマ。
コーヒーが溶け切らない牛乳段階でも美味いし、徐々にコーヒー分が溶け出していく変化も楽しい。
最終的に溶け残った氷は、ガムシロップをかけてガリガリと食べてしまうのが最高なのだった。
というわけで今回のRelive。
Relive '乙部崩落迂回路ライド'
この日は短距離走だったけれど、前日に90km走っているので2日通算で230km。
珍しく土日ともに天気が良くて、たくさん距離を走れてよかった。
しかしうーん、肝心のKURSK AW PROのSPD化はいまいちでしたね。
本格的なSPDシューズはベルクロやらBOAでかなりきっちりと固定するのでいいんだけど、紐のスニーカーだとどうしても緩みがあるのでカパカパしてしまう。
爪先を突っ込むようにして走れば走れないことはないけれど、やはり無理な動きになるので膝やら足の裏が痛くなってしまった。
もしかしたら、ミドルカットなSOUTHSIDE 3.0 PROならもう少しホールド感が高かったかもしれない。
でも普通にフラットペダル用のサイクリングシューズとしては全然アリ。
どう考えても見た目的にも本格的なレースやブルベで履くような靴ではないので、今回のテストは目的外使用だったかもしれない。
折りたたみ自転車だったりクロスバイクだったり、ロードバイクでも街乗りで颯爽と乗りたいときには、KURSK AWがベストだと感じた。
SPDなPROよりも、そうでないタイプの方がカラーリングも豊富でおしゃれ。
だけど結果的に今回は、SPDも試すことができて貴重な経験になってよかった。
我が家のKURSK AW PROは、フラットペダルに戻してDAHON Rounteの相棒として大事に使おうと思っている。