PikaCycling

Raleigh CRAとDAHON routeを買ったばかりのサイクリング初心者。ポタポタとポタリングを楽しもうと思っています。

全サイクリスト道道793行け

Twitterを見ていたらこんな良さげなつぶやきを見つけた。

ので、早速次の週にチャレンジしてみることにした。

道道793号旭台今金線はこの前走ってきた今金町の中を通る道で、町の中心部から山を登って道道263号八雲今金線に合流する。
八雲と今金を結ぶだけならこっちの263を通ればいいので、793は言ってみればオマケみたいなもの。
交通網を血管に例えたら国道は動脈で、毛細血管みたいなこーゆー道はかなり楽しそうな道だという予感があった。

前回は国縫をスタート地点として黒松内経由で日本海側から今金町を通ったので、今回は逆に、八雲スタートで噴火湾側から今金町を走ってみることにした。


コースは100kmと控えめだけれども、やはり秋深くなってくると日没が早くなり、距離を伸ばすのが難しくなってくる。
ナイトライドに対応する装備は持っているんだけど、この時期の大敵は寒さ。
日が傾いてくるとガツンと寒くなるし、日中のライドで出た汗が乾いて体温を奪ってくるので、なるたけ早めに帰りたいのだった。


前の日は職場の飲み会だったのだけど、二次会のお誘いを振り切って速攻で家に帰って就寝。
翌日の早朝には、いつもの遊楽部公園にたどり着いて、いざ出発だ。

当日は完璧なまでの秋晴れで、最高のサイクリング日和だった。
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が、八雲から国縫までデスロード国道5号を走らなければならないのが結構辛い。
13kmしかないから理論上は30分くらいで走れるものだけど、海岸線の常として強烈な向かい風が吹き付けるので全然スピードが出ない。
いつもは横をトラックが通るとその風圧にヒヤヒヤするものだけど、今日ばかりはトラックが風を切り裂いてくれるおかげで走りやすく感じるくらいだった。

左折で出てきたダンプカーを先に行かせたときは、左後ろについて走っていたら普通に平地で45km/h出せてしまったのでびっくり。
ロードバイクの敵は風圧だというのがよく分かった。


国縫から今金町へと続く国道230号はとにかく道路状況がいい。
舗装はピカピカで登りが全く苦にならない。
これまでいろんな道を通って噴火湾日本海を行ったり来たりしたけれど、道の良さでは230号がピカイチではないだろうか。
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美利河ダムに到着し、ダムの上は自転車で走れないので中央まで押して行った。
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そのあとで管理事務所のところまで戻って自販機でスポーツドリンクを買って飲んでいたら、入口に「ダムカード配布中」の張り紙があった。
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集めてはいなかったんだけどここまで来たんだしせっかくだから、と思い「土日はインターフォンを押してください」の張り紙どおりにインターフォンを押してみると、
「まだ配ってないよ!」
との返答が。
配っていると書いているのにまだ配っていないとはこれいかに、と家に帰って調べてみたらコロナの影響で配布を中止しているらしい。
だったら入口の張り紙を剥がすなりなんなりしろよなー。


前回ピリカ湖に来たときはダム下で魚道を見たりしただけだったので、今回はダム湖の周りをぐるっと一周してみた。
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木々は色づき始めで紅葉にはまだ早い感じだったけど、とにかく天気がいいので最高に楽しい。


ダム湖一周を終えて230号に戻ろうとしたところ、「営業中」と書かれたのぼりがポツンと立っているのが見えた。
しかしあたりを見回しても店らしいものはなにもなく、かろうじて民家っぽい建物があったので近寄ってみた。
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なんだこの全然情報量が増えない表札は。
この店が「わたなべ」で「営業中」なことしか分からない。

Googleマップで見てみるとどうやら飲食店らしいので、せっかく足を止めたので入ってみることにした。


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店内は和風テイストでなかなか上品で、「日本料理わたなべ」というのが正式名称だというのが分かった。
メニュー表はなく、壁に貼られた「カツカレー」「ダムカレー」「煮込みうどん」「今日のお昼ごはん」の4種類から選ぶらしい。
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今日のお昼ごはんとは何かと尋ねると、重箱に唐揚げだとか煮物だとかが松花堂弁当のように詰められたものだという。
しかし初訪問で得体が知れない所もあったので、とりあえず無難にダムカレーを注文。
ダムの近くにあるからダムカレーという、言ってみれば安直なメニューに当たりも外れもないだろう、という読みだ。

しかし厨房の奥から、なにやら炒めものをするジャーッという景気のいい音が聞こえてくる。
カレーを作るのに何を炒めているんだろう、と訝しがっていると、凄いカレーが現れた。
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炒め物の音は野菜と鶏肉の素揚げだったのだ。
素揚げなんてものはよっぽど素材に自信がなければ出せないのだぜ、と思いながらかじりついてみると、揚げ物なのに瑞々しくって素材の味が生き生きしていた。

それに負けずとも劣らずルーの方もハイクオリティで、原型が見えなくなるまで煮込まれた野菜の風味だろうか、辛みの中に甘みと酸味が複雑なハーモニーを奏でている。
いや、これは都会に行ってもなかなか食べられない味だぞ。

思いがけずめちゃくちゃ美味しいカレーに出会えて大満足だった。
次回来るときは「今日のお昼ごはん」を注文してみよう。

帰りがけに店のおばさんから、
「このあたりはタヌキが道を横断するから気をつけなさい」
と言われた。
すぐ隣りにある自宅では犬と猫を飼っているとのことで、寒い季節になると犬小屋に犬と猫とタヌキが一緒になって丸まって寝ているくらい、このあたりではタヌキが良く出るらしい。

マジかよ、と思いながら走り出すと、しばらくしてタヌキの親子連れだろうか、3匹がちょこちょこ並んで目の前を横断していったのでマジだった。


今金町のセコマで補給物資を買い込み、本日のメーンイベントである道道793号へと向かう。
後志利別川を対岸に渡り、田園地帯をひた走り続けていよいよ運命の分かれ道だ。
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こーゆー時に登り坂の方に進んでしまうのが、ロードバイク乗りの悲しいところなんだなあ。

しかし道道793号のヒルクライムはめちゃくちゃ楽しい。
まず、車1台通るのがやっとな道幅がいい。
当然車通りはほとんどなく(この日は1台も通らなかった)、勾配は適度にキツく、登り甲斐がある。

さらに、山の斜面に沿って道が作られているので片側が開けており、眺めが抜群にいい。
と言っても笹薮があって写真には映えないのだけど、ロードバイクにまたがった目の高さから見える風景は最高なのだった。


だけど本当の感動はこの坂を登りきった先の、牧場からの広大な眺めにあった。
ヒルクライムの最中は熊よけ代わりにiPhoneをスピーカーにしてラジオを鳴らしてきたんだけど、この風景を前にして思わず音を止めてしまった。
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宇宙の果てまで青く澄み切った空と、地平の果てまで続く緑の草原と、耳に聞こえてくるのは風が揺らす草のざわめき。
ここにあるのは、膨大な自然の中に圧倒される、たった一人の人間の豊かな孤独だけ。
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時期も良かったのだろう、人っこ一人どころか牛っこ一頭さえもいない大地を独り占めした。
こみ上げる感動は風景の良さとか、天気の良さとか、そういう端的なものではない。
いまこの一瞬でなければ味わうことができないかけがいのない瞬間に対する感謝が生んだ感動だった。


結局のところ、自転車に乗ってどれだけ風光明媚なところを巡ってどんな高性能なカメラで撮ったからといって、その時に自分が味わった感動の1/1000も表現できやしないのだ。
食レポと同じで、美味しい目に合うのは本人だけ。
写真自体には意味がなく、写真をフックにして実際に訪れ、体験することにしか意味はない。
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そういう意味では今回のライドはまさに、Veni, vidi, vici(来た、見た、勝った)であった。


カエサルのような気持ちで凱旋下山を始めると、吹き付ける風がやたらと冷たくて、ルビコン川を渡ったかのように震え上がった。
山の気温は日が傾きだすと一気に下がるから危ない。
長袖のジャージを着ていたものの、インナーが汗を吸って濡れているので一気に冷えた。
最後のダウンヒルに備えて替えのインナーかウィンドブレーカーを持っていくべきだったと反省。

とりあえずセコマで買った大福を食べて体に燃料を補給し、遊楽部公園までの残り約30kmを駆け下りた。


麓に戻ると完全に体が冷え切っていたので、このまま帰宅したら風邪を引いてしまうと思った。
そこで直帰する予定を変更して、途中で看板を見かけた「和(やわらぎ)の湯」に寄ってみることにした。
www.tripadvisor.jp

この前寄った遊楽部温泉とは正反対で、山奥にひっそりとある小さな温泉なんだけど、地元の人で賑わっていて大変な人気だった。
というのもここの温泉はとにかくお湯がいい。
見た目からして成分が濃そうな源泉かけ流しの温泉が、惜しみなくドバドバと注がれていて大変に贅沢。
内湯はちょっと熱いけれど露天風呂はぬるめで、とろけるまで入っていたくなる。
嬉しいことにサウナもあって、ということは水風呂も完備なので無敵の布陣。
熱いお湯と冷たい水に交互に浸かっているうちに全身に血がみなぎってきて、無事に風邪をひかずに済んだ。


最後は山岡家の特製味噌ラーメンで〆。
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あらためて今金町を走ってみると、山の上に農地や牧場があるため、ロードバイクで走ったら楽しそうな道がたくさんあることが分かった。

いま気になっているのは北海道道999号美利河二股自然休養村線。
ピリカ湖からさらに山の奥へと入り込んでいく道で、奥美利河温泉へと繋がっている。
温泉は残念ながら現在長期休業中だけれども、露天風呂なのでなんとかなりそうな気がする。
落石の恐れで2020年現在は冬期通行止めから引き続き通れなくなっているけれど、開通した暁にはちょっと行ってみたいと思っている。

脇道が多いので名もなきUnnamed Roadを無闇矢鱈と縦横無尽してもいいかもしれないし、まだまだ魅力がいっぱい潜んでいると感じた。

関係ないけれど自分のハンドルネームは美利河のPirikaをもじったものだったりする。
特に何か意味があるわけじゃなく、言葉の響きが単純に気に入っていただけなんだけど、そういう印象深い場所が訪れてみても楽しい場所だと分かったのは個人的にとても良かった。