これまで検討してきた結果、次に買いたいロードバイクについてはTREK DOMANE AL3、ラレーCR-A、そしてFUJI BALLAD Rの3択となった。
決め手になったのはもちろん見た目と価格。
いやしくもロードバイクを名乗る以上、価格差によって生じる差は誤差みたいなものらしい。
100万円と500万円の自動車だったらエンジンが全然違うので比較対象にならないけど、自転車の場合はエンジンは乗り手自身だしね。
軽いほうが登りに有利とは聞くけれど、重いロードバイクだから登れないというわけでもないし。
安い自転車も高い自転車もギア比は変わらないから最高速度は同じだし。
なので10万円前後のエントリーロードの中から決めるつもりだった。
問題は見た目。
これから長いこと一緒に過ごす相棒になるわけだから、気に入ったカラーのものを選びたい。
CRAなら赤、BALLAD Rなら緑と決めていたんだけど、発色がどんな感じなのか実物を見てみたかった。
だけどそうそう都合よく欲しい自転車の在庫があるわけがないよなあ。
GIANTとかMERIDAなら置いてあるのを見たけど、ラレーなんてマイナーだし、どこに在庫があるか検討もつかない。
そんな感じで悶々としたまま、DAHON routeの用品を買いにショップへと向かった。
パーツ売り場がある店の奥の方へと進むと、たくさん並んだロードバイクの中に一台、まだビニールに包まれたままの自転車が置いてあった。
こんなのは先週相談に来たときには置いていなかったぞ。
赤いフレームで白いバーテープ、ホリゾンタルのクロモリロード……?
もしやこれは、ラレーのカールトンAじゃないか!!!
な、なぜこれがここに!?
夢に出るくらいに想っていたその自転車が今まさに眼前にあることに驚きつつ、舐めるような視線で隅から隅まで車体を眺めた。
いや、これは、写真で見るより数倍カッコいいな……。
クロモリフレームは想像していた以上にスリム。
赤く輝く塗装は存在感がありつつ派手すぎず、思い描いていた以上に魅力的だった。
うっとりしながら見ていると、
「なにかお探しですか?」
と店員から声をかけられた。
まあ声をかけるよね。そんな目で見てたらね。
聞くところによると、メーカーからかなり前に届いていたのを、つい昨日組み立てて今日売り場に出したばかりなのだという。
そんな偶然ってある?
ダホンルートを買ったときも、今朝届いたばかりだと言って開封されたばかりのものを持ってこられたし、この店はどこかおかしい。
なぜ客の好みの自転車を客が来る直前に用意できるのだろうか。
そして、これは買うべき運命なのだろうか。
あまりの衝撃で意識が朦朧としている間になんやかんやで身長と股下を測られて、
「500サイズでちょうどぴったりですね〜」
と言われて跨がされて、もうすっかりオーナー気分でいた。
聞くところによると、CRAはロードバイク初心者が買うにはオススメの一台なのだそうだ。
理由のひとつめは、ここからがロードバイクの入り口だと断言できるモデルであること。
ロードバイクとして基本的なジオメトリを備えているので、速く遠くまで走る実力を持っている。
コンポが安いから価格は控えめだけど、レースで優勝するためでなければ十分な性能。
要は、モビルスーツの性能の違いが、戦力の決定的差ではない、ということなのだろう。
理由のふたつめは、クロモリフレームの自転車は長持ちするということ。
今後もっと速い自転車が欲しくなってカーボンのロードレーサーなんかを買ったとしても、売らずにとっておいて飽きた頃にまた乗り直せばいい。
一生付き合える自転車なので、とりあえずで買っても全然損はしないとのことだった。
標準で補助ブレーキがついているので前傾姿勢に慣れていない頃にも便利だし、慣れてきた後もフラットな部分を握って楽な姿勢で走っているときにもブレーキが使えるから、フラットバーロード感覚で街乗りでもイケるとのこと。
というわけでラレーCRAは、見た目も好みだし価格も想定範囲内、スペックは初心者ライダーには十分ということで、全方位的に全く隙がない自転車であるという結論になった。
TREKもいいと思っていたけれど、見た目が地味なのがちょっとなあ。
通勤通学に使うなら風景に溶け込む黒がいいかもだけど、ハレの日に乗るのなら、少しくらい派手な方が気分が盛り上がる。
どことなくこの自転車、むかし乗っていたユーノスロードスターを想像させるところがある。
もしかしたら自分は、もう一度赤いスポーツカーに乗って風を感じたかったのかもしれない。
BALLAD Rはどうか
120%くらい買うつもりでいたんだけど、一応BALLAD Rも候補なのだと店員に伝えてみた。
しかし、BALLAD Rは基本的にクロスバイクであるBALLADにドロップハンドルをつけたものなので、ロードバイクのような使い方、高速走行やロングライドを見越した設計ではないそうだ。
言ってみればディスクブレーキ付きの高級クロスバイクの部類なのだと。
街なかでファッションとして乗るのならいいけれど、ロードバイクとしての使い方には向いていませんよ、ということだった。
というわけで、結論は出た。
しばし躊躇した末に、胸を張ってこう言った。
「もうちょっと考えます!」
もうラレーCR-Aを買うことは決めた。
考えるべきことは、いつ買うか、ということ。
明日買うか、来年買うか、それを決めるために一旦帰宅の途に着いたのだった。